トップページ//岩・氷/山スキー/ハイキング/雪山/入山データ/会紹介/東北雪崩講習会
Fukushimatoukoukai HomePage
No.3703
オートルート
山行種別 山スキー
La Haute−Route 地形図


■山行期間 2005年4月29日〜5月6日
 
 はじめに、報告書における地名、小屋名などについては、私が聞いたガイドの発音を記入しているので正式な訳とは異なるかもしれません。また、五万分の1の山スキー用の地図から地名等の原文を記載しようとしましたが、パソコンにスペルのないものがあり異なるものがあることをお断りしておきます。 

■2005年4月29日
  (晴天)
グランモンテスキー場ゴンドラ乗場(9:40)→ゴンドラ終点(10:10/10:50) →アルジェンチエール氷河(11:05/11:20)→アルジェンチエール小屋(12:10)
グランモンテスキー場の看板 グランモンテ山頂から見たモン
ブラン
グランモンテ山頂の展望台
アルジェンチエール氷河を登る アルジェンチエール小屋へのト
ラバース
 朝食を済ませて、荷物を玄関に出していると、9時にリオーネル(Lionel)とイボンの二人の男性ガイドと若い女性が到着する。リオーネルとイボンがイケメン風の男なので、女性のメンバーは喜びで笑顔があふれている。事務を担当しているという女性が、荷物をツェルマットのホテルバンホフに運んでくれるとのことで不要な荷物を預ける。装備・荷物のチェックの後、グランモンテスキー場のゴンドラ乗り場まで歩いて移動する。また、ガイドの指示で、今回はメンバーの力量を勘案し、軽量化のため簡単な行動食のみで昼食は持たず、各小屋で昼食をとることになった。
 ゴンドラ2本を中間駅で乗り継ぎ、山頂駅に到着する。階段を20mぐらい登ると3295mのグランモンテ山頂(Aig.des G.ds Montets)で、そこは展望台となっており、モンブランなど360度の景色が楽しめる。記念写真を撮って、階段を平坦になる3233m地点の鞍部まで降り、スキーを履き、リオーネルを先頭に滑り出す。最初の急な斜面は快適に滑り出したものの、新雪が積もっており、ターンすると表面から10cm程度の雪が流れるように崩れてしまい、非常に滑りづらく転倒する者もいる。それでもリオーネルの後に続いて滑っていくと、最後はアルジェンチエール氷河(Glacier d'Argentiere)の奥を目指してトラバース気味に滑り込む。この氷河の最奥端はフランス、スイス。イタリアの三国の国境が接している場所になっている。
 ここでスキーにシールを着け、斜面に張り付くようにして建っているアルジェンチエール小屋(Ref d'Argentiere:2771m)を目指してイボンを先頭に登り出す。イボンの初日でもありスローにという指示どおりにゆっくりと登る。小屋の手前の急斜面のトラバースでは滑落しないようにガイド二人がきちんとフォローしてくれる。小屋ではチーズオムレツの昼食をとる。アルジェンチエール小屋は、食堂からの展望がとてもすばらしく、夕日と月のあかりがきれいだった。

■2005年4月30日
  (晴天)
アルジェンチエール小屋(6:20)→シャルドネのコルへの登りの取付き(6:35/6:50)→シャルドネのコル(9:50/10:45)→サレーナの窓の取付き(12:00)→サレーナの窓(12:20/12:35)→トリエン小屋(13:10)

 
シャルドネ氷河の取り付きで
シールをつける

 
クトーをは外し、シャルドネのコ
ルを目指す
シャルドネのコルからロープで確
保され降りる
左上にいるのがイボン、中央で
確保しているのがリオーネル
サレーナの窓(正面のコル)に向
かう
サレーナの窓の登りはスキー
を担ぐ

 
ここでシールを着け、トリエン小
屋への登りとなる

 
広大なトリエン氷河をバックに
サレーナの窓からトリエン氷河
をバックに
トリエン小屋 目玉焼きとジャガイモを潰して
焼いたもの
小屋から見たトリエン氷河
 5時30分に朝食をとり、早朝で斜面がクラストしているため、登ってきた斜面と反対側の斜面に出て、シャルドネ氷河(Glacier du Chardonnet)の取付きの2600m付近まで滑り降りる。ここでシールを着けてからスキーをザックに付けて、一部小石も出ている急な斜面を登り出す。
 しばらくして、傾斜が緩くなった地点からクトーを着けシール登高となる。雪面が固く締まっているため傾斜がきつくなると少し緊張するが、イボンが登りやすいルートをとってくれるのでみんなそれほど苦労せずに登って行く。急な斜面が終わるところで小休止をとるが、その先はペースが上がらず、シャルドネのコル(Col du Chardonnet:3323m)までの登りが長く感じられた。
 シャルドネのコルでは、イボンとリオーネルが20mぐらいずつ2カ所でザイルにより確保してくれたので横滑りで簡単に降りることができた。ただ、私はイボンに最初に行けと言われたが、すぐ下にはダブルアックスでクライムダウンしている人がいて横滑りで雪を落とすとにらまれるし、上からは早く行けと言われ困ってしまった。また、ザイルの長さの関係で下の平坦地まで行かずにビレーを解除しなければならないのだが、Mさんがビレーを解除してすぐに約5mぐらい滑落したのを止めたときには、多少焦りました。
 リオーネルとイボンはスキーで滑って降り、全員揃ったところで、サレーナ氷河(Glacier de Saleina)の3091m地点までトラバース気味に滑り、そこでシールを着ける。ここでオーバーズボンを脱いだのだが、登り始めるととにかく暑い。景色は最高なのだが!サレーナの窓(Feuetre du Saleina:3261m)は、前に来た時にはほとんどスキーを履いたままシールで登ったと記憶していたが、リオーネルの指示でスキーをザックに付けることになり、ガイドがステップを切りその後を登ることとなった。結果的には先行していた他のパーティも全てスキーを担いでいた。少し固い雪をキックステップで登り、ようやくサレーナの窓に着くと広大なトリエンプラトー(Plateau du Trient)が目の前に真っ白に広がっている。昔見たたばこのテレビコマーシャルのような真っ青な空と真っ白な雪の山、感激で胸がいっぱいで本当に来て良かったと痛感した。
 少し休んだ後、トリエンプラトーを滑ってトリエン小屋(Cab.du Trient CAS:3170m)の見える鞍部(Col d'Orny:3098m)でシールを着け、トリエン小屋まで頑張って登る。小屋では昨晩の活躍(いびき?)が聞こえたのか、部屋は我々だけの貸し切りであった。また、アルジェンチエール小屋で一緒に泊まった人が多く、笑顔で挨拶を交わした。  

■2005年5月1日
  (晴天)
トリエン小屋(6:50)→エキャンデのコル(7:35/7:45)→Kelais d' Arpette Restaurant前(林道除雪終了点)(8:55/9:30)=タクシー=林道除雪終了地点(10:35/10:50)→モンフォー小屋(13:30)
トリエン氷河のセラック帯 エキャンデのコルの登り ガイドのリオーネルとイボン
エキャンデのコルからの滑り アルペッテイ谷の雪崩とデブリ アルペッテイ谷の悪雪の滑りで
みんな苦労する
林道終点、もう雪も終わり モンフォーへの林道の登りとグ
ランコンバン
モンフォー小屋への登りの途中
で小休止
スキー場の中にあるモンフォー
小屋
改築されたモンフォー小屋 モンフォー小屋の以前のままの
部分
 カリカリに固まった斜面を快適に滑っていくと、トリエン氷河(Glacier du Trient)のセラック帯となる。幅の狭い斜面を横滑りを多用し滑り降りるが、アイスバーンのためみんなの顔に緊張がはしる。途中からイボンはやさしそうなルートに移ってくれたので簡単に抜けることができた。最後にトラバースして、スキーを担ぎ30mぐらいキックステップで登るとエキャンデのコル(C.des Ecandies:2796m)に出る。
 コルからの最初の急な斜面は、固い雪を押さえながら何とか滑れたが、アルペッテイ谷(val d'Arpette) の中はトラバース気味に大きなデブリを2カ所越差なければならず、そこでは雪の固まりを処理するのにみんな苦労し、最後にはスキーを脱ぐように指示される。そこから下はモナカ雪の片斜面となるが、その悪雪といったらガイドのイボンも転倒するぐらいで自分も3度も転倒し、ほどほど嫌になってしまった。ただ、高度を下げるほど雪の状態が良くなり滑りやすくなったのだが、そこで雪がなくなり、アルペッテイレストラン(Kelais d' Arpette Restaurant)の前でスキーを終了し、呼んでおいたタクシーを待つ。
 シャンペ(Champex)の先の町(Sembrancher)で行動食などの買い物をして、ベルビエ(Verbier)を通り過ぎ、林道に雪が出てきた1880m地点でタクシーを降り、シールを着けて林道を歩き出す。(今年は雪が少なく、ベルビエのスキー場のロープウェーは4月20日で終了したとのこと)谷に広がる村々の景色やグランコンバン(Grand Combin)、トリエン氷河といった素晴らしい景色を眺めながらゆっくりと林道を歩く。前回はロープウェーを1本だけは乗れたので、1時間もかからずにモンフォー小屋(Cab.du M.Fort CAS:2457m)に着いたのだが、今回は2時間40分も林道とスキー場を歩いてしまった。(あとで他の人から聞いたら本数は少ないが下のロープウェーは動いていたとのこと。)
 マッターホルンやグランドジョラスが見える最高のロケーションにあるこの小屋は、改築されたとのことで、寝室もトイレ(水洗)も新しいだけでなくシャワー室もあり、タオルと石鹸つきで全員シャワーを浴びる。私はシャツなどを洗濯し髭まで剃ることができ、さすがスキー場内にある山小屋だとその快適さに感心する。


■2005年5月2日
  (晴天)
モンフォー小屋(6:00)→ショーのコル(7:30/40)→鞍部(8:00/8:10)→モーミンのコル(8:55)→ローザブランシュ3336m(10:55/11:05)→プラフリー小屋(11:25)
ショーへのコルへの登り ショーへのコルから見たローザ
ブランシュ
モーミンのコル、奥はローザブ
ランシュ
ショーへのコルから鞍部まで滑
り降りる
モーミンの先の雪原で小休止 奥がローザブランシュ山頂、最
後の登り
ローザブランシュ山頂からアン
ザイレンして降りる
ローザブランシュ山頂にて ローザブランシュからの滑り

 
プラフリー小屋
プラフリー小屋のデザート
 スキー場の中(Gl.de la Chaux)をシール登高で登る。ショーのコル(C. de la Chaux:2940m)までの約500mの高度差をゆっくりと登り、最後は固く締まった急な斜面をトラバース気味に登ってコルに出る。シールを外し急な斜面を滑り込み、2764m地点まで快適に滑り降りたあと、シールを着けてモーミンのコル(Col de Momin:3003m)を目指し登り出す。グランコンバンなどの景色を楽しみながら登り続けコルに出ると、優雅な姿のローザブランシュ(Rosablanche:3336.3m)が目の前に見える。小休止を2回ほど取りながら登っていき、ローザブランシュの肩に出るとマッターホルンが見えてくる。
 ここでスキーを外し、ガイドと3人ずつアンザイレンしてつぼ足で登ると、10分ほどでモニュメントのようなものがある狭い山頂に到着する。前回は下を通り過ぎただけだったので、感動もひとしおで、山頂ではみんなで抱擁を交わし、マッターホルンをバックに記念写真を撮る。下りは私が先頭で肩まで下降し、ザイルを解いたあとリオーネルに続いてプラフリー氷河(Gl .de Prafleuri)を滑り出すが、ここまでで最高の雪質でオートルートの滑りを満喫し、快適に飛ばし20分ぐらいで一気にプラフリーの小屋(Cab.de.Prafleuri:2624m)へ着く。
 この小屋は新築されたきれいな小屋で、シャワーもあり食事も美味しく、ロッキングチェアーで昼寝までしてリゾート気分を味わってしまった。これじゃまた来たくなるのも無理はないかな〜。

■2005年5月3日
  (曇り)
プラフリー小屋(5:50)→Col.de Rouxの手前の斜面(6:15/6:32)→隧道入口(6:45)→隧道出口ダム上(7:15/7:20)→ダムの駐車場(8:00/8:10)→ゲート(9:00/9:10)=アローラスキー場(10:13)=ホテルGlacier(10:25)
隧道入口 真っ暗な隧道の中を歩く 隧道の中の鍾乳石のような氷柱
隧道の出口 隧道から出たところのダム ダムの上の林道を滑り出す
横滑りで急な斜面を降りていく ようやくダムの下に降りる 石灰石の上に石が載っている
不思議な風景

 
奥はピンダ・アローラ

 
アローラ谷とモンコロン
アローラのホテル・レストラン
 夜半から降り続いた雨は、朝食の後ようやく止み、シールを着けて登り始めるが、ディス湖へ出るコル(Col.de Roux:2804m)の手前の斜面に今朝のものと思われる雪崩のデブリが出ていた。雪崩の危険性を判断するためリオーネルとイボンが先行して様子を見に行く。しばらくして二人が戻り、ディス湖へ下る反対側の斜面は雪崩の危険性が高いため予定を変更し、ディス湖ダムからシオン(Sion)に降りることとなる。
 どのルートを通るのかと思っていたら、プラフリー小屋のすぐ下にダムの工事に使ったと思われる隧道があり、約20分ぐらい暗いトンネル中をヘッドランプを点けて歩くとダムの西側の2433m地点の出口となり、ダムを見下ろす位置に出る。隧道の中は真っ暗であるが、所々に天井から落ちた水滴が凍結して鍾乳石のように透明の氷の柱となっている場所があり幻想的な景色であった。
 隧道の出口からは道路に沿って滑るが、雪質が重くダムの駐車場まで悪戦苦闘しながらの滑降となる。駐車場に出ても道路の除雪が完了していないため、スキーを担いでゲートまで歩く。迎えに来たタクシーに乗り、途中石灰石の柱の上に石がのっている面白い景色を見せてもらいアローラ(Arolla)へ向かう。
 アローラに到着したところ、スキー場は既にクローズとなっており、リオーネルから3つの案が提示される。
1 今からディス小屋を目指し登り始める。しかし、約5時間かかり今日の午後からはさらに天候は悪化するので勧められない。
2 明日、ビネット小屋(Cab.des Vignettes CAS:3160m )へピース氷河(Gl de Piece)を登る。約5時間かかるが、多少天候が悪くても行けるし、時間と体力によってはピンダ・アローラ(Pigne d' Arolla:3796m)の往復も可能である。
3 明日、ピンダローラの肩までヘリで行き、ビネット小屋へ入る。
 2案で行くことにして、アローラのホテルにチェックインする。ところが、昼食時に私が参考までにヘリの料金は幾らぐらいなのか聞いたところ、リーダーをはじめメンバーの意見がヘリの利用に傾く。しかもその日のうちにベルトール小屋まで行けるかどうかを確認したところ大丈夫との返事があり、天候が良ければヘリを利用することに決まった。午後からは買い物をしながら過ごすが、すぐに雨が降り出し夕方には雷が鳴るなどしたので、停滞したのは正しい判断であったと思う。
 
■2005年5月4日
  (晴天)
ホテル(6:45)→ヘリポート(6:50/7:20)→山頂直下の鞍部(7:32/7:45)→ピンダ・アローラ(8:00/8:25)→氷河(8:50)→ポートンバのコル(9:45/10:05)→小休止(10:15/10:25)→エベックのコル(12:55/13:10)→コル(または、ナカムリ)の小屋(13:45)
ヘリから降りイタリア側を見る ピンダ・アローラ頂上を目指し
ての登高
ピンダ・アローラ山頂からマッタ
ーホルン方向を見る
ピンダ・アローラ山頂から滑り
出す
ブレネイ氷河に向かって滑り込
ブレネイ氷河に各自思い思い
のシュプールを描く
ポートンバのコルの直下を登る ポートンバのコルからの下り ポートンバのコルからの滑降
オーテマ氷河へ滑り込む エベックのコル(右奥)を目指し
登る
氷河からピンダ・アローラ方向
を見ているところ
エベックのコルへの辛い登り カールから見たコロンのコル ナカムリ小屋の入口
ナカムリ小屋の昼のパスタ 夕食のデザート(パイ)
 昨日の雨が嘘のように止んで青空が広がっている。車でヘリポートに向かいしばらく待った後、ヘリが来て4人づつ2回に分かれて運ばれる。15分ぐらいかかると言われていたが、10分もせずに平坦なピンダ・アローラ頂上直下の鞍部(Col du Brenay:3639m)に到着する。
 全員揃った後、シールを付け20分足らず歩くと山頂に到着する。前回山頂を踏めなかったSさんはじめ全員感動の握手を交わし、記念写真を撮影する。山頂からはブレネイ氷河(Glacier du Brenay)に向けて粉雪を舞上げてきれいなターンを描き、思い思いのシュプールを氷河にきざむ。途中からは、クレバスがあるためリオーネルのシュプールをあまり外さないで滑るようにとの指示がある。それでも雪質が良いため今回のオートルートでは最高の滑りを楽しめた。
 3300m地点でシールを付け、ポートンバのコル(Col.Nord.des Portong:3369m)まで登り返すが、ここからの下りはじめは急な斜面のためザイルを出す。ここでも最初に行けと言われ、スキーを担ぎ確保されながら20mぐらい降りた後ザイルを外し、15mほどステップを刻みながら降りたところでみんなを待つ。全員揃ったところでスキーを履き、岩稜を抜けてオーテマ氷河(Glacier d' Otemma)に滑り込み、シールを付ける。この氷河は圧倒されるほどのすごい広さで、イタリア側の山々も素晴らしい眺めである。ここで今日はベルトールの小屋ではなくイタリア側のナカムリ小屋(CABANE COLLON NACAMURI:2818m)へ泊まると言われる。
 ここからピンダ・アローラとエベックのコル(Col de l'Ebeque:3392m)の間のコル(Col de Cherimotane:3053m)を通り、モンコロン(M.Collon:3637.2m)を見ながらプチモンコロン(Petit .M Collon:3555.5m)とに挟まれたコロン氷河(Glacier du M.Collon)をエベックのコルを目指し登るが、日差しも強く長い登りでみんなバテバテになりながらようやく登りきる。それでもエベックのコルからは傾斜も雪質もほど良い斜面で、楽しみながら滑り降りることができた。
 コロンのコル(Col Collon:3087m)でベルトール小屋へ向かうトレースと分かれ、カール状の斜面をナカムリ小屋へトラバースして向かおうとしたが、雪崩で遮られたためカールの底に降りて、シールを付けて登り返す。この小屋は、ナカムリとコロン(Rif CoClon CAI)という二つの名前を持つ美しく昼のパスタも美味しい小屋だった。イタリア側にあるせいか泊まり客のほとんどがイタリア側から来た人である。但し、寝室は日本の山小屋のように一部屋に板の間が3段あり、しきりもなくそこに並んで寝るスタイルのため声が響くので、部屋の中では声を立てず静かにするようにとの注意を受ける。
 今日のルートはガイドが特別に、地図に記載された通常のスキールートから外れたバリエーションルートを案内してくれたようで非常に充実した山行であった。(これもヘリのおかげ?)また、このように様々なルートがとれるオートルートの広さと素晴らしさを実感させられた。
 
■2005年5月5日
  (曇り・小雪)
ナカムリ小屋(6:20)→シールを着ける(6:30/6:40)→コロンのコル(7:45)→アローラ氷河(7:55)→モンブルーのコルの登り始め(8:55)→コル(9:30)→氷河(9:40/9:50)→2380m付近(10:55/11:10)→ベルプリーナのコル(12:00/12:20)→ザイルをはずす(12:50/12:55)→林道手前(13:20/13:30)→シュンビューヒュッテ(14:35)
ナカムリ小屋から滑り降り、鞍
部でシールをつける
コロンのコルからアローラ氷河
に滑り込む
アローラ氷河でシールをつける。
前方がベルトール小屋
モンブルーのコルの急斜面をキ
ックステップで登る
薄日が差す中のモンブルーの
コルへの登り
モンブルーのコルから氷河へ滑
り込む
クレバスの危険があるためアン
ザイレンをする
テーテブランシュの下部の岩稜
沿いにアンザイレンで登る
クレバス帯を過ぎ、ようやくロー
プを外す

 
シュンビューヒュッテの入口
もう最後の登りも終わり、リラッ
クスしたメンバー
シュンビューヒュッテから見たマ
ッターホルン
 4時半起床の予定であったが、他のパーティが誰も起きないため、うるさくしないようにガイドの指示で起床時間を遅らせる。朝食後、今までとは違って今日は風も強く小雪が舞い視界も利かない中、スキーを付けて滑り降り鞍部でシールを付け登り出す。先行するイタリアのパーティが前方の急な斜面の手前を登っているのが見える。
 傾斜の緩い斜面に取付くのかと思っていたら、リオーネルは昨日トラバースして下った斜面へと取付いていく。クラストした急斜面で日本でなら決して取付かないか、クトーを付けて登ると思われる斜面のため、みんなトラバースするのに苦労して登る。コロンのコルでシールを外し滑り出す頃、たぶん、緩斜面を登ってきたのだろう先行していたイタリアパーティが登ってくるのが見えた。
 アローラ氷河(Haut Glacier d'Arolla)に滑り込んで、シールを付けていると避難小屋であるブクタン小屋(Ref.des Bouquetins CAS:2980m)の前に2人の人がいるのが見える。ここからはモンブルーのコル(Col du M.Brule:3213m)を目指し、ガスの中太陽が見え隠れする中を、不思議な形をした蒼氷の雪の固まりに驚かされながら登り続ける。ここも広大な氷河で日本の山とのスケールの違いに圧倒される。モンブルーのコルは急斜面のため、スキーをザックに付け、ガイド二人がキックスッテップをしたあとを登る。苦しい登りの後岩稜に囲まれたような氷河(Haut Glacier de Tsa de Tsan)にトラバース気味に滑り込みシールを付ける。小雪が舞いガスで視界が利かない中登って行くが、クレバスの危険があるため3100m付近でガイドを先頭に4人ずつ2班に分かれアンザイレンする。
 リオーネル・K・S・T、イボン・M・M・Kの順でザイルを結び登り出す。リオーネルのペースがやや早かったこともあり、Sさんには悪かったが少し強引にザイルで引っ張らせてもらう。テーテブランシュ(Tete Blanche:3724m)の下部の岩稜に沿って進み、最後には右の雪が尾根状になったところを登ると、ベルプリーナのコル(Col de Valpelline:3568m)に出る。
 ここからはStochjigletscher氷河に滑り込むので楽しみにしていたら、リオーネルにいきなり「you are good skier」と言われ、ここからもクレバスの危険があるためリオーネル・イボン・私の順でザイルを結び先行し危険のないことを確認したあと、残りのメンバーがラストをKさんが締めて滑るよう指示される。最初は少し嬉しかったが、「ザイルを緩ませるな!」「常にタイトに!」と言われるので、ターンをするたびにザイルが緩んだり、張ったりするのを防ぐためプルークの姿勢で滑り続けて足がパンパンになってしまった。目の前には大きなクレバスが口を開けているため仕方ないとは思うものの、うしろにいれば自由に滑りを楽しめるし写真も撮れるのにと、他のメンバーが羨ましくも思えた。
 それでも約3150m付近でザイルを外して自由に滑れるようになった時は、嬉しくてリオーネルに続いてうしろも見ずに、どんどん滑ってしまった。残念ながらマッターホルン(Matterhorn)は雲の中で見えなかったが滑りは楽しめた。シュンビューヒュッテ(Schonbielhutte SAC:2694m)が見えると、まもなく雪も少なく平らになって道路が見えてくる。
 小屋へ向かう通常の夏道は登らず、シールを付け北の方へ登ったあと、シュンビューヒュッテへ滑り降りる。リオーネルによるとこのルートもスペシャルルートとのこと。この小屋は麓に近いせいか明るくきれいな小屋で、夕方雲の切れ間から少しだけマッターホルンの山頂を見ることができた。ここの女主人グネーリアさんは翌日泊まったツェルマットのホテルバンホフの女主人と友達とのこと、さすがにヨーロッパの女性は強い?

■2005年5月6日
  (薄曇り)
シュンビューヒュッテ(7:00)→スキーを外す(8:30/8:40)→駐車場(9:00/9:30)→ホテルバンホフ(10:10)

 
シュンビューヒュッテからの滑り
出し

 
林道の脇を雪を拾って滑る
雪が消えてスキーを外す
マッターホルンはガスの中

 
長かったオートルートも終了。み
んな笑顔

 
ツェルマットは原則電気自動車
しか入れない
非常に快適なバンホフホテル
 小雪の降る中を小屋の脇から雪を拾って滑り降りる。何度かスキーを外しながら固い雪に苦労しつつ滑り、雪が切れた地点でスキーを脱ぎ、林道をダムの管理事務所らしきところまで歩いて30分ほどタクシー(電気自動車)を待つ。タクシーで30分ほどでツェルマットのホテルバンホフに着き、ガイドと荷物を運んでくれた事務の女性と市内のレストランの昼食で打ち上げをする。
 今回のベルビエのガイドは、リオーネルは28歳、イボンは26歳でガイド学校(3年)を出たばかりということであったが、二人とも基本に忠実で客の安全を常に考えてくれ非常に良いガイドであったと思う。ヘリを利用したことについても、後で最終日の天候が悪かったためベルトール小屋に泊まった人はツェルマットへ降りることができずアローラに戻ったということを聞き、今回のメンバーとしてはベストチョイスであり、天候を考え宿泊先を変更したガイドのおかげだと思う。
 また、イボンによればオートルートは今回のアルジェンチエールからツェルマットへぬける通常のルートの他にたくさんのルートがあり、日程と希望を伝えてもらえば様々なプランをコーディネイトできるとのことであった。地図には数多くのルートが記載されており、まだまだ行きたいところはたくさんあるのも確かである。
 最後に、遠く離れた福島で何の準備も手伝いもせずに現地では口を出してばかりいた私をメンバーに加えてくれた都職山の会のメンバー、3年連続の海外山行を認めてくれフォローしてくれた職場の皆さん、そしてこんな私を見捨てずにいてくれる妻と娘達に感謝の言葉を言いたいと思います。「ありがとうございました。!」
 次はどこにしようかな???(M.K)


■概念図


トップページ//岩・氷/山スキー/ハイキング/雪山/入山データ/会紹介/東北雪崩講習会