都合で遠出できない12日は地元の蔵王しかない。さりとてさすがにこの時期の蔵王は滑るといってもかなり限られる。それでも下から見る屏風岳の東面はまだ白いので、何とか滑ることができるのではと思い行ってみることにした。アプローチはエコーラインの南蔵王縦走路口付近からとし、下山は秋山沢ルートを想定して計画した。とはいえ秋山沢ルートはすっかり雪がないだろうから、雪を拾って夏道に何とか乗せたらスキーを担いで歩くことにした。下山地点の東北大学蔵王観測所に1台デポするが、だめならピストンにすればいいのだ。
5月も中旬だが標高を上げればまだまだ雪はある。南蔵王縦走路口手前の道路脇から雪の上に乗って歩き出す。刈田峠避難小屋を過ぎてから峠ノ沢沿いに澄川まで下る。澄川はあちこち穴が開いているので、右に左に避けながら歩いていく。源頭部を芝草平近くまで詰めてから進路を少し左に切った。屏風岳の西斜面を雪を追いかけて登っていく。雪はあちこちで途切れ始めているが、右往左往しながらも何とか辿っていく。しかし、本格的に藪に阻まれてしまい、やむなく登山道を探し出し歩くことにした。登山道も雪は途切れがちだが、先ほどよりは歩きやすい。これならば最初から登山道を歩けば良かったかもしれない。やがてスキーを担ぐこととなり、そのまま山頂に到達した。ソロの男性がいて不忘山まで行けるかどうか迷っていたので、南屏風岳まで行って状況で判断したらとアドバイスした。
斜面の状態を見るとやはりかなり地肌や樹木が出ており、ラインは制限されるものの滑ることはできると判断。雪庇を避けられるドロップポイントを探しながら稜線を北へ移動する。雪庇が落ちてなで肩となった場所がありドロップポイントに決める。上から秋山沢ルート方向を見るとやはり雪がなく、下山は無理と判断し登り返すことにした。目線の高さに浮かぶ雲を眺めながらのんびり昼食を取る。滑降のトップは初屏風岳の西○さんだ。斜めに斜面に滑り込むと、スキーでカットした端からスラフがサーっと音を立てて流れ落ちていく。スラフがさらにスラフを呼び流れが止まらない。スキー巧者の西○さんはターンを刻みスラフを横切り滑っていく。自分もドロップして転倒に注意しながら滑り落ちていく。中腹でいったん止まって斜面を見上げるとまだスラフが流れている。東面下部は斜度が緩みフラットな斜面を快適に滑降。稜線から400m近く落としたところで終了とし、再び稜線まで登り返す。北寄りに夏道の方へトラバースしながらシール登高するが、緩んだ雪に思ったより時間がかかる。斜度が立ってくるとスキーを担いでキックステップで稜線に登った。
しばらく夏道をツボ足で歩き、雪がつながってからスキーに切り替えた。先ほどのソロの男性と再会し、無事不忘山まで行ってきたと嬉しそうに報告してくれる。この男性の後を歩くが離されがちになる。締まった雪上の歩行ではツボ足のほうが軽快なのだ。芝草平へ降りていくと杉ヶ峰にはいくつかのパーティーが見える。杉ヶ峰の東斜面をトラバースし前山もトラバースして通過。シールを張ったまま歩いたが、ほぼ登り返し無しなので剥がした方が良かったようだ。最後の登りはスキーを担いで道路に出て車まで戻る。道路脇の斜面ではフリースタイルのスキーヤーが練習をしていた。エコーラインを下りデポしておいた車を回収して帰宅。来年はもっと良いタイミングで滑りたいものだ。
屏風岳東面は今回で8回目の滑降になる。これまでは一番遅かったのが4月30日(2017年)であり、5月に入ってからの滑降は初めてとなる。その年にもよると思われるが、意外やそこそこ滑ることができた。ただし、登り返しも含めてそれなりに時間がかかった。今回は稜線から400m落としたが、早めにトラバースして登り返せば時間短縮にはなる。それで満足できるかは別だが。往路も杉ヶ峰と前山をトラバースし、芝草平からは素直に夏道を辿れば今回より時間短縮になる。6時間程度での行動が可能になるだろう。(熊)