鳥海山のロングルートである中島台からの新山に行くことにした。北面の滑降も狙うつもりだが、この時期は雪が固くて滑降に適さないことも多いので、条件が良ければ滑ってみようと考えた。今回の相方は菊○さんだが、御年67歳とは思えないほどパワフルな方で滑りはアグレッシブ、登りではいつも引き離されてしまうほどスタミナ抜群なのである。60代という括りでは自分も同じ年代ではあるのだが、体力・技術共々とても追いつけないという感じがする。そんな菊○さんなので山スキーでは頼もしい相方ということになる。
中島台レクリエーションの森には前夜到着しテントを張った。我々以外には車が1台のみだったが、深夜過ぎから車がやってくるようになり明け方にはほぼ満杯になった。駐車場からすぐ雪を拾いながらスキーで歩く。橋を渡るときだけスキーを担いだ。森を抜けて千蛇谷に入っていく。天気は曇りだが回復傾向との予報に期待するとしよう。左手に鳥海山と右には稲倉岳の景観は何度来ても素晴らしい。ところがどうにも自分のペースが上がらない。菊○さんには先行してもらいマイペースの一人旅だ。登るに従い谷が狭まってくるので、前後左右に他のパーティーが現れてくる。思ったとおり天気が良くなり青空も見えてきた。
まだ屋根の一部しか出ていない大物忌神社の横を通り新山へ登る。山頂でやっと菊○さんに合流だ。北面の状況を探ると今日はまだ滑った形跡がない。雪はというと気温が低めなので緩んではいないが、さりとてアイスバーンというほどでもないようだ。もっと緩むだろうと想定していたのだが、滑りたいという欲求の方が勝り北面滑降を決断した。いざドロップすると思ったより固い。転倒に注意して滑り降りる。転倒は滑落につながり、そうすればかなり落とされるだろう。標高で200mほど下げただろうか、雪が緩んで滑りやすくなってきた。ここからは素晴らしいロケーションの滑降が続く。思わず知らず歓声が出てくる。歳も何も関係ない。クラックもなくフラットな斜面に酔いしれる。菊○さんもキレッキレのターンで滑り降りてくる。
北面を見上げると満足感に浸る。今日北面にトライしたのは我々だけだったようだ。北面基部まで200mほど残して左へトラバースし北面を外れる。基部まで滑っても何とか登り返し無しで戻れるかもしれない。来年機会があればトライしてみよう。方向をだいたいの勘で定め、ノントレースの斜面を滑り降りていく。藪にも阻まれず上手い具合に往路に合わせることができた。重くなった雪に時折り推進滑降も交えながら出発点へと戻った。今回は思ったより雪が残っていたので、ギリギリだが出発点からすぐスキーで歩くことができた。明日以降は雪切れしてスキーを担ぐ距離が日に日に長くなるだろう。中島台ルートは出発点と山頂との標高差が大きいだけに、どちらも良好な条件というのはなかなか難しい。(熊)