大型連休とは言っても自分の場合は地元のイベントが多く、なかなか連続休暇とはならないのが現実。29日も午前中は2箇所に顔を出さなければならないが、午後からの半日は自由になる。19日に山スキーに行ってから10日も経つので何とか行きたい。しかし、半日で行けるところとなると近場に限られる。29日は山仲間のkaさんから、車利用の周回ルートで蔵王の熊野岳東面の誘いがあった。もちろん断ったのだが、まてよ午後からピストンで行ってみるのも悪くないと思った。調査山行として今後のデータ取りにもなるだろう。時間的には厳しいが単独でもあり、行けるところまで行こうと気楽に考えて向かうことにした。
賽ノ磧駐車場に着いたのは13時頃。急ぎ準備してスタートしたところ、kaさん達3人パーティーがやってきた。熊野岳東面を滑り降り、ひよどり越えを登り返して帰ってきたのだ。こちらはこれからなので、そそくさと挨拶だけして先を急ぐ。今日は東面滑降の他に狙いがもうひとつあった。ひよどり越えの滑降だ。山仲間のYさんが滑った記録を見てから気になっていた。索道跡まで来るとその先は濁川への急斜面となる。ここで仙台YMCAの2名とスライド。丸山沢を滑ってきたという。登りのトレースをたどり、始めは左手になだらかにトラバースするが、やがて急斜面になる。ひよどり越え中間部の斜度は45度を越えていると思われ、急斜面と言うよりは壁と呼びたくなるほどだ。転倒は即滑落に繋がるので許されない。緊張はしたが雪は腐っていて柔らかいこともあり、ワンターンしたあとは壁を刻んで高度を下げていく。下部は斜度が緩み快適な滑降となる。
濁川まで降りると沢はあちこち大きく口を開けている。先行者のトレースを追って、恐る恐る薄いブリッジを渡り対岸へ。ツボ足で登り下りして丸山沢へ。今シーズンは雪が豊富で、丸山沢はまだしばらく滑ることができそうに見える。丸山沢にもそそられるが、今日は右手の支沢を登って東面に向かう。kaパーティーのシュプールが見える急斜面に取り付く。登るに従い斜度が急になり、シール登高も苦しくなったが何とか登りきった。もっと右から回り込んだ方が楽と思われるが、右手には沢が口を開けヤブも出ている。上手く雪が繋がるかどうかは何ともいえない。
急斜面の上は斜度も落ち着き、ほぼ直登で効率良く高度を上げていける。やがて熊野岳東面の大斜面が頭上に広がってくる。一定の斜度(図上計測では約25度)の斜面が続く。左手上には黒いロバの耳岩が見えている。3時30分を引き返す時刻と決めた。大斜面最上部への到達は困難かと思われたが、やがてロバの耳岩が目線の高さになりさらに下に見るようになると欲が出た。息を荒げて登り続け3時34分に到着。丸山沢から540m登るのに68分かかったことになる。オーバーした4分は下りで挽回しよう。
さて大斜面の滑降だ。独り占めのゲレンデにシュプールを刻むのは爽快だ。時間もないので一気に滑り降りようとしたが、足が耐えきれず2度立ち止まって息を整える。雪はまだザラメになりきってない中途半端な腐れ雪で、スキーがあまり滑らない雪質だが斜度があればそれも大した問題ではない。あまりに平坦で広いのでまるで練習ゲレンデである。変化に乏しくちょっと退屈と思ってしまったが、それは贅沢な悩みというものだろう。丸山沢を横切り新噴気口の下まで滑り込んでトラバースし、濁川へと下る。ひよどり越えをキックステップで160m登り返すと、賽ノ磧駐車場には4時53分着。所要時間は3時間37分だった。機会があれば刈田岳からのピストンと比較してみたい。
このルートをお勧めするものではないが、もし行こうとするのであれば休憩などの余裕を見て、5時間〜6時間を行動時間として計画すればいいだろう。ただし、ひよどり越えの下降はスキーにしてもツボ足にしても滑落に注意が必要で、雪が固いときはピッケル・アイゼンなど適切に判断されたい。(K.Ku)
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