Fukushima toukoukai Home page
No4779
飯豊山・本社ノ沢
2105.1m一等三角点峰
山行種別 山スキー
いいでさん・おむろのさわ 地形図

トップ山スキー>飯豊山・本社ノ沢

山行期間 2013年5月9日(木)
コースタイム 大日杉小屋(5:15)→スキー登高開始・1,160m(6:33,6:41)→地蔵岳(7:34,7:42)→大又沢出合(7:52)→本社ノ沢出合(7:54,8:03)→左岸取り付き・1,280m(8:28)→尾根稜線・1,770m(9:46)→飯豊本山小屋(10:31)→飯豊山頂(10:48,11:00)→飯豊本山小屋(11:11,12:23)→本社ノ沢出合(12:50,12:59)→地蔵岳(14:11,14:37)→大日杉小屋(15:43)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
大日杉小屋から残雪がある ザンゲ坂の急登 雪の無い尾根道
尾根道の脇にはイワウチワが咲いていた 標高850mからの残雪状況 標高1160mでスキーに切り替えた
ダマシ地蔵から飯豊山と地蔵岳が見えてきた 地蔵岳山頂からの飯豊山 大又沢へと下る
大又沢はすっかり雪で埋まっている 本社ノ沢上流より見た出合の状況 本社ノ沢を登る
本社ノ沢右俣の大斜面 本山小屋に到着 小屋より山頂を望む
飯豊山頂にて 宝珠山とダイグラ尾根 飯豊の主稜線
未だ登ったことのないの大日岳 滑降へとスタート 一ノ王子と大日岳
本社ノ沢左俣の大斜面 雪面はフラットで素晴らしい シュプールがあるのだが画像ではあまり見えないのが残念
地蔵岳へ登り返す 地蔵岳からの飯豊山 登ってきたWさん
尾根を下ってゆく ザンゲ坂を下る 登山口に到着

行動記録
 前日夜に白川ダム湖上流まで移動し車中泊。午前4時に起床すると朝食を済ませ、大日杉の登山口まで車を走らせる。道路脇に雪は残っているものの、登山口までの道はスムーズに走行できる。支度をしていざ出発と歩き出したところ、1台の車が走ってきた。車を降りた運転者と話すと、彼も今日単独で本社ノ沢を滑りにきたという。平日に単独でこんな所を滑りに来るのは相当の好き者であるが、もちろん自分も人に言えた義理ではない。お先にと歩き出し橋を渡ると、標高610mの大日杉小屋前からすぐ残雪歩きとなる。昨年は雪がなかったのでゴム長で歩いたのだが、今年は始めからブーツで歩くことにした。連休中とおぼしき足跡に加え、昨日かと思われるアイゼンの足跡もあり、それなりに入山者がいたことを伺わせる。ザンゲ坂の雪壁をブーツを蹴り込んで登り、尾根に出るとさすがに雪は付いていない。イワウチワの咲く尾根道を登っていくと、汗が滴り落ちるのでTシャツになり捻り鉢巻きを締める。昨年は後半かなりバテバテになったので、ペースを意識的に落とすようにする。登高量も多いことから、エネルギー補充もこまめにするつもりだ。
 登っていくと雪が徐々に繋がってきて、標高1160m辺りでスキーに切り替える。数日前に新雪が降ったようで雪面は白く美しく、何か得したような気持ちになる。朝なのでまだ締まっている雪面は、シールも良く効いて登りやすい。登り始めて2時間20分ほどで地蔵岳山頂に到着したが、ペースを抑えたせいか疲れは感じない。正面には飯豊山が圧倒的な存在感で迫ってくる。山体は朝日を浴び、眩しいほど白く輝いている。大日杉小屋から地蔵岳山頂までに920mの標高を稼いだのだが、本社ノ沢へはせっかくの高度をいったん下げることとなる。その標高差は380mほどもあり、そのことがこのルートの累積標高差を大きくしている。シールを剥がして滑降体制に入ると、左手の急斜面へと滑り込む。朝で日陰ということもありカリカリのバーンだ。転倒すればそのまま下まで落ちそうだが、斜面が平滑で滑りやすいこともあり転倒もなく大又沢に降り立つ。沢はすっかり雪で埋まっていて、下流へと滑ると難なく本社ノ沢出合に到達した。昨年のこの区間は、あちこち沢が大きく口を開けており、越えるのに苦労したのだが今年は何の苦労もない。昨年費やした時間と労力に比べると、あっさりと出合まで来てしまったことに拍子抜けするほどだ。
 しかし、ここからが本番で、山頂までの1000m近い登高が待っている。再びシールを貼ると、正面に飯豊山を見据えながら本社ノ沢を登り始める。なだらかな沢を歩いていくと高く上がってきた太陽で、雪面からの照り返しとの両面焼きで暑い。新雪で覆われていない部分では、結構な数のスキーのトレースが付いているのが分かる。どうもこのGWに本社ノ沢は賑わっていたようだ(後で分かったのだが、本社ノ沢は首都圏の愛好者の知るところとなり、このGWはボーダーも含めて10名以上が本社ノ沢を滑りに来たらしい)。やがて右手の斜面へと方向を変え、左岸尾根に突き上げる支沢に取り付く。始めは直登していたが、斜度が増してくるとジグを切って登るようになる。新雪がずり落ちないか心配したが、今のところは大丈夫なようだ。下を振り返ると、今朝会った男性が登ってくるのが点のように見えた。時間にして40分以上離れているようだ。尾根に近づくとさらに急斜面になり、スキーを乗せるとグサ雪がズリ落ちる。何度か斜面がズリ落ち、少々冷や汗をかく。斜面を横切るように左にトラバースして逃げ、小尾根を回り込んで尾根の下に出た。昨年はそうしたように、もっと下から右上の尾根に上がるべきだろう。尾根に近づくと風に吹かれる。尾根を越えて風が巻くのだろうか、風向がくるくる変わり体があおられるので歩きにくい。風にじっと耐えながら、尾根の南側をトラバースして登っていく。傾斜はさほどではないが、本山小屋が見えてからが長く感じる。
 10時31分、本山小屋到着。スタートから5時間16分は上出来か。小屋脇にザックをデポすると、山頂までのピストンに出る。昨年は時間と体力が無くなり断念したのだが、今年はどちらも十分にある。稜線の風は強いが、スキーで山頂へ向かう。久しぶりの山頂からの眺めを堪能し、しばしひとり撮影大会をすると小屋へと戻った。小屋でゆっくり昼食を食べていると今朝の男性が到着し、彼もまた山頂へと向かっていった。せっかくなので彼が戻ってくるまで待って話しをすると、新潟の山岳会の方でWさんといい、始めて4・5年の山スキーは主に単独でやっているという。自分と同じ匂いがし親近感が湧く。これから昼食であろうWさんに別れを告げると、いよいよ滑降だ。
 昨年は小屋直下から本社ノ沢の右俣を滑り降りたが、今年は左俣を滑ることにした。右手に尾根を移動し、小尾根を越すと左俣の大斜面だ。眼下に広がる大斜面に思わず声が出る。斜面は真っ白い新雪の部分があるが、滑りやすいザラメになりかけの部分へとスキーを走らせる。何たる最高!何たる快感!体は落ちながらも天空に舞う鳥のような気持ちになる。やがて斜面が狭まり、新雪が全面になると重い雪のターンに手こずる。スキーを引っかけ2度の転倒をしながら、右俣との出合まで滑り降りて一息入れる。満足感に浸りながら、滑ってきた斜面を振り返り見上げる。お世辞にもきれいとは言えないシュプールだが、比べるべき他のシュプールも無く自己満足の世界に浸れる。本社ノ沢出合まで緩斜面の沢床にスキーを走らせる。
 出合で登り返しのためシールを貼っていると、早くもWさんが降りてきた。さて地蔵岳への登り返しだが、往路とは違うルートから登ってみることにする。Wさんは往路と同じ斜面を登り返すようだ。出合からすぐに急斜面のトラバースになるが、下には大又沢が大きく口を開けていて緊張しながら進む。滑落すれば沢に落ちるリスクを考えると、あまり良い選択ではなかったようだ。トラバースが終わればあとは登るだけだ。昨年はバテバテになり、出合から2時間もかかった地蔵岳だが、今年は1時間12分で登ることができ余力を感じる。山頂から滑ってきた本社ノ沢左俣を眺める。シュプールがなんとか見えるが、視力の弱い自分の目がもどかしい。それにしても人間の足跡の、何と何とちっぽけなことか。Wさんが登ってきたので、写真のモデルになってもらう。
 さて飯豊山に背にして滑り始める。下るにつれ、狭い尾根、クラック、樹林などをかわしながらの滑降となる。普通なら滑りにくいばかりの状況だろうが、今日はそんな所も楽しいと思える自分がいる。これもまた余力を残した山行だからこそだろう。結局、標高940mまで滑り降りることができた。スキーをザックに付けていると、Wさんが追いついてきた。2人で前後しながら登山口まで駆け下りる。大日杉小屋に到着しWさんと握手。今日も素晴らしい山旅ができた。飯豊山よありがとう!
 今回は条件が良かったこともあり、各所で長く取った休憩時間を考えると、実質9時間程度で飯豊山頂往復が可能ということになる。こうなるともう少し欲張っても見たくなる。余力をもって楽しむか、目一杯つき進むか、どちらもありだ。なお、文中にも書いたがエネルギー消費が激しいので、意識的にカロリー摂取をこまめに(1.5〜2時間おき程度)したが、その効果はあったようだ。(K.Ku)

概念図

トラック 登り=赤 下り=青


 トップ



Copyright(C) 2013 福島登高会 All Rights Reserved.