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No4733.
西茶畑(中退)
山行種別 山スキー
にしちゃばたけ 地形図

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山行期間 2013年2月9日(土)
コースタイム 雁新道入口(8:02)→斜面取り付き(8:18)→656mピーク(9:01)→1160m地点(11:22,11:32)→休憩(11:47,12:04)→堰堤(12:13)→象ヶ沢噴水(12:18,12:33)→笹雁新道入口(13:14)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
笹雁新道入口 笹雁新道の積雪量は多くはない 山形自動車道の脇を通る
尾根までの急斜面を登る 谷の対岸尾根にはリフトが見える 656mピークの送電線鉄塔

 
雪庇が崩落した
雪庇から離れて歩く ブナの2次林を登る
徐々に樹高が低くなる 雪庇となった細尾根(向こうは無名ピーク) 強風となり雪も吹き付けてくる
視界が悪くなる中での急斜面トラバース 源頭部を滑降を開始する 水無沢を滑る

 
50センチほどある雪崩の破断面

 
雪崩れて弱層となったガリガリの雪面が現れているところをトラバース
デブリが沢床を埋める
象ヶ沢噴水の表示板 象ヶ沢噴水まで降りる 崩落箇所のトラバース

行動記録
 国道286号を山形県境へと向かっていくと、セントメリースキー場のすぐ先、山形自動車道笹谷ICの1キロちょっと手前に笹雁新道の入口がある。ちょうど車2台分くらい除雪してあり駐車することができた。笹雁新道はかなり前に、水無沢の堰堤(砂防ダム)を築造するために造られた道らしい。車からスキーを降ろして準備を始めるが、先日ビンディングが壊れた板に替え、以前の板を今日は持ってきた。しかし、この板のシールは糊がかなり弱くなっていた。おそらく歩いているうちに剥がれるだろう。予防的にビニールテープで4箇所ずつ巻いて押さえることにした。
 歩き始めるとすぐ山形自動車道の下をくぐり、少し先で右手の植林地に入り斜面に取り付く。登るほど密度の濃くなる樹林と傾斜に、ちょっと手こずりながらひと汗かいて尾根に出る。水無沢を挟んで対岸の尾根には、セントメリースキー場のリフトが見える。ここからはずっと明瞭な尾根を辿ることとなる。これから目指す脊梁山脈のほうは雲に覆われ風も強そうだが、まだこの辺りは穏やかだ。地形図にある656mピークには送電線の鉄塔があり、その下をくぐって進むと雪庇の発達したなだらかな尾根だ。雪庇ではついこの間、吾妻の若女平下りでのヒヤッとした経験があるので、注意深く樹林の中を歩いていく。自分がトップで歩いていると、後で重く鈍い音がした。振り返ると雪庇が崩落しているではないか。後続も雪庇から離れて歩いていたので問題なかったが、やはり雪庇は油断ならない。
 ブナの2次林の登りが続く。樹林帯の中では風にも吹かれず、なんとも穏やかな空間だ。2次林のまだ細いブナでも、なぜか心を和ませる。ふと右側の沢状にトレースがあるのが目に入った。おやこんなところを登ってくるとは。我々以外にも物好きはいるものだと関心?する。もしかするとあの人かもしれない。やがてそのトレースはこちらの尾根に上がってきて、標高900mほどで我々の進路と合わせた。そのトレースはスキーで2人パーティーらしいが、ありがたく拝借して楽をさせてもらうことにする。ペースも上がり先行者に追いつくかと思われたが、そのトレースは標高1060mほどで右にそれ下山していったようで、再びラッセルを始める。
 やがて標高1100mほどで雪庇のある細尾根になり、風がまともに当たるようになる。晴れていれば右前方に雁戸山が見えるはずだが、雲に覆われまったく見えない。寒気も厳しく、指が痛くなってくる。年齢のせいか、この頃はすぐ指が痛くなる。茶畑まではまだ250mほど登らなければならないが、この風の中を歩くのはちょっときつい。今日の目的は水無沢を滑ることでもあり、3人の気持ちももういいだろうという感じになった。こういうことは以心伝心、なんとなくわかるものだ。風を避けて風下へ斜面をトラバースし、水無沢の源頭部、標高1160mで中退とした。
 シールを外して滑り始めるが、雪が重くて自分の技術では滑りにくい。沢床はパウダーで快適滑降と思ったのだが、世の中そう上手くはいかない。下ると沢の両岸が迫り、狭いトイ状となる。トップを滑るKさんがアッと言う声とともに突然消えた。見れば数メートル下で沢床に頭から刺さっているではないか。よくよく見れば雪崩の破断面の段差から落ちたようだ。右岸の斜面が見事に雪崩れて沢床をデブリで埋めている。先日気温が上がって雨が降った時の雪面が弱層になり、その上に積もった雪が雪崩れたのではないかと思われる。破断面は50センチほどあったが、Kさんは怪我も何もなかったのでホッとする。滑っている時にちょうど雪崩に遇ったらと想像するだけでゾッとする。バックカントリーの必需品として、ビーコン・ゾンデ・スコップは各自持参しているが、実際の現場ではどうだろうか。訓練はしても実際の経験は未だないのだ。露出したガリガリの弱層をトラバースし、デブリで埋まった沢床に降りて凸凹の雪を滑る。デブリが柔らかいところをみると、雪崩れてからそんなに時間は経っていないだろう。100m以上あったように思えるデブリを通過してやれやれひと息つく。
 さらに下降を続けるとやがて堰堤に着いた。左岸から巻いて少し滑ると笹雁新道に合わせる。すぐ「象ヶ沢」の真新しい表示板がある。ここから水無沢に降りる斜面に伏流水が噴き出ていて、象ヶ沢噴水と呼ばれている。
 水無沢はその名のとおり通常は水の流れていない沢だが、この伏流水から下は水の流れる沢となっている。厳冬期の象ヶ沢噴水を見に急斜面を下ったが、斜面が雪崩れて危うく沢に落ちてしまうところだった。沢は浅いが、ブーツが水没するのはご免被りたい。登り返しもひと苦労なので、冬季の見物はあまりお勧めできない。
 笹雁新道は道幅もそこそこあり冬季でも概ね問題ないが、1箇所崩落箇所があり通過には注意を要する。やがて登りのトレースに合わせ、スキーを走らせるとゴールだ。予定より早めの終了となったので、登りの時に右から合わせたトレースの調査に行くことにした。国道286号冬期通行止めのゲートから歩き、登り口は「阿古耶の松」からであることを確認できた。しかし、下りのトレースを捜したが見当たらない。登りのトレースを寸分違わず下りも辿ったのだろうか。不思議な思いが残ったが、調査を打ち切ることにした。帰りは青根温泉じゃっぽの湯で汗を流し帰宅した。
 今回はちょっとマニアックなルートだったが、開拓の山スキーも地元の岳人ならではのものだろう。水無沢の滑降は雪質次第。今日のような雪質なら、登った尾根のような樹林帯の方が雪は軽く、かえって滑降を楽しめたかもしれない。今回登った尾根の反対側になる、坂元沢も気になる存在であり、いつかチャレンジする機会があればと思う。(K.K)

概念図

トラック 登り=赤 下り=青


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