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No.4631
蔵王・コガ沢
南屏風岳 1810mピーク
山行種別 山スキー
ざおう・こがさわ 地形図

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山行期間 2012年4月18日(水)
コースタイム 白石スキー場(6:50)→ゲレンデトップ(7:25)→不忘山トラバース(8:46,9:00)→南屏風岳(9:53,10:05)→滑降開始(10:25)→南屏風の壁下部(10:36)→権現沢出合(10:43)→白石スキー場(11:27)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
白石スキー場ゲレンデトップ 不忘山頂の直下をトラバース 南屏風岳の手前で青空が出た
南屏風岳山頂 見下ろした斜面にはクラックが ガスが切れてコガ沢が見えた
一瞬青空が見えた大斜面 急斜面のトラバース 下から見上げた大斜面
さらに下って見上げた コガ沢が下りのルートとなる うっかりすれば滝にドボンだ
ここももう少しで渡れなくなりそうだ さすがにゲレンデ下部はこんな状態 滑降ライン

行動記録
 今年は雪の降り方も異常で、滑るタイミングを捕まえることが出来ずに、早4月も中旬となってしまった。もう今シーズンは無理だ、いやまだ何とかなる。考えても結論は出ない。しかし、時期的に限界が近いのは明らかだ。そんな葛藤があり、実際に不忘山に登り、屏風を近くからこの目で見て判断しようと思った。その結果は、何とかやれそうだということ。心配したアイスバーンもそれほどではなく、気温にもよるが日中はザラメになるだろうと思われた。雪崩れも心配だが、この時期はもはや全層雪崩だから、実際に斜面に行ってみて判断するしかないと思った。
 4月も中旬となると沢床の口の開き状況が懸念される。一昨年は2月でさえかなり口を開けていたのだ。今年の豊富な積雪量でどの程度埋まっているのか不明だ。穴にうっかり落ちればタダではすまない、穴の迂回処理に思わぬ時間がかかることもあるだろう。このところの気温と雪解けを考えると、週末の21・22日まで待ったのでは厳しいだろうと思えた。となれば今週は午後から出勤の18日午前中が、自分にとって今シーズン最後のワンチャンスだ。不安材料はあるが、思い切ってやるしかない。18日を決行日と決めた。しかしその前日、平地では局所的にひょうと雨が短時間だが激しく降った。斜面にはどんな影響を与えただろうか…
 朝起きて窓から南蔵王を眺めると、雲がかなり下がっていてスキー場でさえ見えない。一瞬モチベーションが下がるが、ある人にいわれた「山は行ってみなければ分からない」との言葉を思い出す。向かった白石スキー場はもちろん誰もいない。今日はAコースのゲレンデから登る。昨日の雨で雪解けが進み、だいぶ地面が見えているが、まだ何とか雪をつないで登っていける。雪の状況は日曜日とあまり変わらずだが、雨で表面が融けたせいか汚れが目立つ。白く霞むガスの中を登っていくが、土曜日よりは明るい感じがする。日曜日気になった尾根のツボ足トレースも、だいぶ融けて形が崩れていた。
 視界が無いことを除けば、特に問題もなく土日にスキーをデポした地点に到達。南屏風はおろか不忘山の山頂さえ見えず、この状態で滑ることが出来るのか不安はあるが進むことにする。今日は山頂を踏まずにスキーのまま、山頂直下の北斜面をトラバースすることにした。ザラメとはいえその層は薄い。エッジを外せば滑落かと思うと緊張するが、無事山頂のすぐ西側にある小さなコルに到達。スキーをザックに装着し、南屏風への稜線をツボ足でたどる。腐れ雪の踏み抜きとドロドロの土に難儀しながらナイフリッジを歩いていく。南屏風手前の登りで西側に青空が見えたが、山頂に着いた頃はまたガスの中となった。
 南屏風山頂から滑ることが難しい場合は、稜線を北へ進み水引入道への分岐手前で斜面をトラバースし、コガ沢右俣を滑る予定としている。今日は気温も上がりすぎず雪も安定しているようなので、南屏風山頂から滑降しよう。しかし、山頂からそろそろと雪庇に近づき覗きこむと、下のほうで斜面が横にパックリと口を開けているのが見えた。ここの斜面はダメだ。様子を見ながら北へ数百メ−トル進むと、何とか下りることが出来そうな所を見つけた。ガスは薄くなったが相変わらずで、斜面下方は見えず状況が分からない。そうこうしているとガスが少し晴れ、南屏風の壁とコガ沢が見通せるようになり、ダイナミックな景観が広がった。左右に見える南屏風の壁はいっきにコガ沢へと400mを下りる大斜面で、ここを滑るのかと思うと身震いするようだ。雪庇は張り出してはいないが直下は落ちるような急斜面で、その後は斜面なりに35度くらいになる。ザラメなので深雪パウダーのようなブレーキ効果はまったく無い。意を決して斜面に入る。
 雪庇直下をトラバースしながら10mほど下り、斜面を観察し下降ラインを探る。見ているとまたガスがかかって視界を奪われてしまった。しまったグズグズせずにさっき滑るべきだった。とにかくこのままでは飛び込めないので、しばらく待つことにする。しかし状況は変わらない。時間も気になってきたので、ガスが少し薄くなったのを機に斜面に飛び込む。不格好ながら数ターンしてみると何とかなりそうだ。山中に自分の雄叫びがこだまする。雪面に筋のある斜面を避けながら滑り降りていく。一部に雪崩のデブリもあったが、全体的には斜面はきれいで安定している。高度を下げるにつれガスが薄くなってくる。壁の下部まで降りて見上げると、ぼんやりと稜線が見える。その稜線に向かってコガ沢の本流は何本かに分かれるが、その内の1本を滑り降りたことがわかる。
 壁の下部からはコガ沢を辿り滑っていく。すると沢床に夥しい量の木の枝が落ちている。今月4日の爆弾低気圧で折れた枝が、斜面から落ちて沢に溜まったのだ。この枝にはずっと邪魔され続け、左右の斜面に逃げたり諦めて踏んで進んだりと、余計な汗をかくことになった。沢もあちこちで口を開けているので気を抜けない。落ちて下流の雪の下に流されれば、ほとんど助かるすべはない。穴の脇の斜面を慎重にトラバースする。この沢の状況を見ても、週末まで待たず今日決行してよかったと思える。両岸の斜面もあちこちで雪割れしていて、落ちてこないかと気にしながら下っていく。沢があまりに口を開けているので、たまらず1150m辺りで右岸の斜面に逃げた。すると斜面にスキーのトレースがある。こんな所を滑る人は限られる。おそらく、日曜日に北屏風を滑ったYさんと水引入道を滑ったHさんのものだろう。その後はそのトレースと重なったり離れたりしながら再びコガ沢に降り滑っていく。
 950m辺りで沢から離れ、右岸の斜面をトラバースする。シールを付けずに階段登高などで30mほど高度を稼ぎ、尾根を回り込むとスキー場のゲレンデに出た。ゲレンデを飛ばして今朝のスタート地点近くまで戻ると11時27分だった。南屏風の方向を見やれば相変わらずガスで見えない。しかし、脳裏にはクッキリとその姿がイメージされ、何ともいえない充実感に満たされる。(K.K)

トラック 登り=赤 下り=青


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