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No.4481
飯豊・門内沢 門内岳 1887mピーク
山行種別 山スキー
いいで・もんないさわ 地形図 長者原、飯豊山

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山行期間 2011年5月15日(日)
コースタイム 梅花皮荘(5:39)→飯豊山荘(6:36)→温身平(6:59)→雪渓末端(8:10,8:22)→石転ビノ出合(9:03)→門内岳(12:13)→門内小屋(12:25,12:57)→石転ビノ出合(13:22)→雪渓末端(13:29,13:43)→温身平(14:47)→飯豊山荘(15:11)→梅花皮荘(16:15)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
除雪の終わった道を歩く 湯沢に架かる橋のゲート 温身平より梅花皮岳と烏帽子岳
雪渓を歩く 婆マクレのトラバース 地竹原の手前でいったん沢に下りる
ここからスキーで歩く 雪面は比較的フラットで歩きやすい 梶川出合
石転ビノ出合 石転び沢の土砂流出とデブリの状況 門内沢の斜面崩壊箇所
快晴の雪渓を登る 沢を横切る流出土砂 青空に向かってのキツイ登高
稜線に出る(手前から北股岳、梅花皮岳、飯豊本山) 門内小屋 小屋前から滑降開始
デブリと石を避けながら滑る 梅花皮沢が口を開ける 温身平のブナ林

行動記録
 午前3時に目覚まし時計で叩き起こされる。車を走らせ梅花皮荘には5時10分頃到着した。一般利用者の邪魔にならないよう駐車場の手前の方に車を止める。スキーを担いで5時39分にスタート。ごうごうと流れる玉川に架かる吊り橋を渡り道に出る。
玉川沿いのこの道はまだ冬季通行止めでゲートが閉まっている。車で飯豊山荘まで行くことが出来ないので、昨年は自転車を車に積んでいったのだが、今年は歩くことにした。飯豊山荘までの道のりを、Kさんはテレマークブーツのままで、自分は長靴で歩く。道は既に除雪が終わっていて車も走れる状況だが、ガードロープ等の安全施設の整備がまだなので、その設置が終わるまでは通行止めということだろう。斜面の雪が落ちきっていない箇所もあるので、雪のブロックが落ちてくる可能性もある。町の情報によると、今年は例年より遅く6月上旬開通のようだ。
 飯豊山荘までの約4.5kmを1時間弱で歩く。湯沢の橋を渡り気持ちの良い新緑のブナ林を約1.6キロ歩くとやっと温見平(ぬくみだいら)の表示板のあるところだ。昨年はここまで自転車で47分だったが、今年は徒歩なので80分かかった。どちらが良いかは考え方次第だろう。この場所からは梅花皮岳がよく見える。ここから先は残雪歩きが多くなる。砂防ダム脇の階段を登った先からがいよいよ登山道になる。梅花皮沢の左岸に沿って付いている登山道は残雪で見え隠れし、ともすれば見失いそうになるので、先をよく見て踏み跡や赤布を探しながら歩く。前方にスキーを担いだ単独行者を発見。追いつくと女性であった。単身で門内沢を滑る予定だという。なんとアクティブな女性だろう。
 婆マクレという急斜面では緊張のトラバース。ここは崩れて道形がほとんど無くなっている。Kさんのテレブーツはこんな場所では分が悪い。滑落に注意して慎重に通過する。地竹原を過ぎたところで梅花皮沢の雪渓に乗る。ここからやっとスキーで登ることが出来る。梅花皮荘からここまでで9km近い歩きだ。このアプローチの長さがあるからこそ、この時期に滑りにくる者は少ない。先ほどの女性はテレマーカーで、さっさと準備をして登っていく。自分はここに長靴をデポしてブーツに履き替える。今日は快晴で、スキーでの雪渓歩きも軽快だ。いま足下の雪渓の下では、雪解け水がごうごうと流れているのであろうが、聞こえるのは自分の歩く音だけだ。
 石転ビノ出合で休憩。ここは門内沢と石転ビ沢が出会う場所で、見上げる左の沢が石転ビ沢、右の沢が門内沢だ。これから登ろうとする石転び沢を見上げると、沢の中ほどが茶色くなっている。左岸の斜面が崩れて沢に土砂が流れたようだ。デブリも見える。雪渓の左端を通れそうだが落石の不安もある。右の門内沢を見上げると、中ほどから上は見えないものの、この位置から見える範囲では石転び沢より状態はいいようだ。悩んだが予定を変更して門内沢を登ることにする。石転ビノ出合から少し登ってさらに確認しながら、山岳会にルート変更の連絡を入れる。飯豊もこの辺りまで登ると、なんとか携帯(docomo)が使えるので助かる。しかし、この選択はあまり賢くなかったことを後で知ることになる。
 石転ビノ出合から稜線までは約1000mの標高差があり、沢の雪渓で一気に上り詰めることになる。ゆえに登りは厳しく体力勝負になるが、下りのダイナミックな滑降の魅力がそれに耐えさせてくれる。
 門内沢を登っていくと、両側の斜面で雪崩があちこち発生していて、沢の中央までデブリが落ちてきているのが目に入る。雪だけでなく斜面の一部も崩壊し、土砂や岩まで雪渓の上を流れている。石転ビ沢より状態が悪いかもしれない。しかも斜面の雪には多くのクラックが入っていて不気味だ。3月の地震の影響もあるのだろうか。他の山でも例年にはなく、多くのクラックが入っているのが確認されている。休憩しながら斜面を見上げてどうしようか考えてしまう。
 石転ビノ出合で抜いてきた単独女性が、休まずそのまま登っていく。確かに悠長に休んでいる場合ではないようだ。突然「ラーク!」と上から声がする。顔を上げるとサッカーボール大の落石が転がり落ちてくる。我々はラインから外れていたので、そのまま動かず、しかし目は離さずに落石の行方を追った。雪渓の落石は恐い。静かにしかし凄い勢いで落ちてくる。その後我々は、さらに2回落石に襲われることになる。最後の落石は危なかった。50センチはあろうかという落石が落ちてきて、そのラインを目で追うと、20mほど下にいるKさんに真っ直ぐ向かうように見えた。「ラーク!ラーク!」と大声で叫ぶKさんが間一髪体をかわし、落石がKさんの足をかすめるように落ちていったのが同時だった。見ている方はかなり冷や冷やしてしまった。
 その後は上方と左右に、忙しく注意を払いながらの登高がつづく。高度を上げると雪も締まってきたのかデブリも少なくなってきた。しかし、沢の左岸側をかなり稜線に近い位置から土砂が走った跡があり、予断は許せない状況が続く。
 いよいよ勾配が急になってくるとシールでの直登は出来なくなり、電光形にジグを切って登ることになる。しかし、くだんの単独女性はシールの効きが良いのか技術が優れているのか、我々より浅い角度でジグを切りどんどん登っていく。急な登りになれば追いつくだろうと考えていたのだが、逆にどんどん離されるばかりだ。表面の雪はシャーベット状で、滑落の心配はあまりないが、それでもシールが滑るときがあり一瞬ヒヤッとする。ずっと下まで一望できる急斜面は高度感が凄く、一歩一歩登っていくときのぞくぞくする緊張感がなんともいえない。左手には梅花皮岳も見えてきた。門内岳も近いはずだが、山頂手前の急斜面のせいで見ることが出来ない。昨年は見えた門内小屋の屋根も、今年は雪の溜まりかたが違うのかまだ見えない。
 最後の急斜面の肩を斜に登ると、門内岳の山頂がすぐそこだった。今年も山頂までシール登高が出来た。西側には二王子岳が見える。Kさんが登ってくるのを待って門内小屋に移動する。門内小屋の入口扉の窓が破れていた。そのため中に入った雪が固まって扉が内側に開かず、小屋の中で休憩することが出来なかった。
 さて待望の滑降だ。昨年は滑り出しがガスっていたこともありかなり緊張したが、快晴の今年は心地よい緊張感で斜面に挑める自分がいる。柔らかいザラメ状の雪は滑りやすく、下界に飛び込んでいくような感覚でのターンが続く。一気に滑り降りるにはもったいないしその脚力もないので、何度も止まって互いに写真を撮りながら滑降する。
 単独女性は別なラインで先行し、瞬く間に石転ビノ出合まで滑り降りてしまった。門内沢の上の方はいいのだが、中段まで降りるとデブリや石が増えてくる。スキーで石を踏んでしまうので注意が必要だ。石転ビノ出合までの標高差1000mの滑降を楽しみ、滑ってきた門内沢を見上げる。石転ビノ出合から下は勾配も緩くなり、スキーを流しながら雪渓末端まで滑る。長靴に履き替えスキーを担ぎ、再びの長い歩きだ。温身平、飯豊山荘とひたすら足を運ぶ。お土産に道の脇でフキノトウやタラノメを採り、梅花皮荘に着いたのは16時15分だった。今日温身平から飯豊に入ったのは、山スキーが4人とツボ足2人だったようだ。昨年より短かったとはいえ、10時間を超える行動を無事終えた余韻と充実感が自分を満たす。石転ビ沢を滑らなかったのは残念だが、また飯豊に来る理由が出来たというものだ。残雪の飯豊が見える梅花皮荘の温泉で汗を流し、さっぱりしてから帰路についた。(K.K)

概念図

トラック 登り=赤  下り=青

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