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No6178
間々川下流部
吾妻山  最上川源流松川上流
山行種別    無雪期沢登り
ままがわかりゅうぶ 地形図

トップ沢登り>間々川下流部(大平温泉〜ママ河原)

山行期間 2019年9月15日(日)
コースタイム
不忘閣跡(8:05)→大平温泉(8:37,8:54)→火焔滝(9:05〜10:05)→剣急滝(10:10)→高巻き(10:22〜12:20)→15m滝(12:26)→昼食(12:47,13:02)→燕滝(13:09)→高巻き(13:30〜16:12)→ママ河原(16:28,16:38)→不忘閣跡(17:12)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
吊り橋で大平温泉へ 大平温泉 沢に入る
険谷の奥に火焔滝が見えてくる 火焔滝40m 階段状の水流右を登る
中段までは比較的容易 剣急滝50m 右岸を高巻く
灌木混じりの岩壁を直上する 岩壁下をトラバース 天元台が見えた
小尾根の下に沢が見えた 懸垂下降で沢に戻る 15mのY字滝
剣急滝の上流でやっと昼食 燕滝20m 前へ水を飛ばしている
左岸から高巻く 2ピッチ目 3ピッチ目の脆い岩壁
樹林帯をトラバース 小尾根を下降して沢に戻る 遡行を再開する
ママ河原の登山道渡渉点 登山道を下る 刈り払いされた登山道

行動記録
 8月18日に吾妻の松川を大平温泉まで遡行したが、さらに上流も遡行して尾根に抜けたいと考えていた。それは2012年からの想いでもある。大平温泉からの上流部は火焔滝や剣急滝などの大滝が連なる険谷となる。火焔滝は大平温泉から沢沿いに15分ほどで滝下に至るので情報もそこそこあるが、その上流の剣急滝は数少ない遡行記録と滝見台からの遠い画像程度である。さらに上流の20m滝は高巻きが悪いらしいが情報は少ない。福島登高会では1976年に遡行しているが、その遡行タイムは現代の我々からすれば超特急レベルで参考にならない。自分なりに遡行時間を見積もって何とか尾根の登山道まで抜けることができるだろうと考えた。遅れた場合は登山道が渡渉するママ河原から下山するとしよう。
 パーティーは8月の遡行時と同じメンバーでの3人となった。体力技術レベルが分かっているので安心できる。下山口となる不忘閣ヒュッテ跡近くの駐車スペースに車を置くと大平温泉へと歩く。吊り橋を渡り大平温泉に到着。露天風呂が沢から丸見えなので脇の通路を通って入渓する。通る際は旅館に断りを入れたほうが良いだろう。我々は女性客に遠慮して15分待った。入渓してすぐ右から佐原沢が合わせる。この出合から上流を間々川と呼ぶようだ。火焔滝(ひのほえのたき)下まで数百メートルの遡行は容易である。ここまでは滝見物の一般者も来るという。火焔滝は高さ40mとされていて、夕日が当たると水流が火焔のように見えることからこの名称になったという。火焔滝は順層の階段状で左岸を直登できる。念のためロープを引いて登るが中ほどまでは容易だ。上は段差が大きくなり少し難しくなる。右の灌木帯に逃げるのが定石のようだが、大きな段差をハーケンを1枚打って乗り上がるとその後は順調。落ち口まであと5mというところで50mロープいっぱいとなったので、灌木に支点を取り2人に登ってもらう。下を見ると一般者が滝の手前でコーヒータイム中だった。ロープを出したので火焔滝には約1時間を要した。
 火焔滝の上流を歩くとすぐ大きな滝が見えてくる。高さ50mの剣急滝だ。山形県観光情報では嶮急滝(けんきゅうのたき)とされているが、急は山が切り立ってけわしいさまを表す巉(ざんと読む)の当て字ではないかという気もする。そうすると嶮巉滝(けんざんたき)ということになるが正解は不明なのでここでは剣急滝とする。剣急滝は釜のある見事な直瀑で両岸は屹立した岩壁であり取り付くことなど考えられない。厳しい高巻きが予測されるが実際に高巻かれているので自分もできるはずと言い聞かせる。少し戻った右岸から急な斜面を登るとヤブ混じりの岩場になった。垂壁に近い岩場を灌木頼りに直上するため30mロープを伸ばす。上に出て岸壁下部を落ち口方向へとトラバースすると小尾根となる。ふと足元を見ると乾電池が落ちていた。7月に遡行したパーティーがいるのでその時のものだろう。対岸には天元台のペンション村が見えた。今いる小尾根を下るかすぐ先の小沢を越えた小尾根を下るか悩んだが、とりあえず今いる小尾根を下降してみることにした。かなりの急斜面を灌木頼りに下降すると落ち口のすぐ上のようだ。下は灌木が切れるので30mロープを落としたが届かず50mロープを投げなおす。20m弱の懸垂下降で沢に降りたが隣の小尾根ならもっと短い懸垂で降りられたようだ。ロープを出したこともあり剣急滝の高巻きには約2時間を要した。
 剣急滝落ち口のすぐ上は15mのY字滝がある。観察すると左壁を登れそうだ。岩のフリクションは十分だが安全のためロープを出すことにする。この滝だけ西○さんにリードしてもらったが難なく登ってくれた。滝の上に出て少し歩くとすぐ20m滝が見えてきた。この滝は燕滝と呼ばれているらしい。ふと気が付くと昼をかなり過ぎていたので昼食とする。高巻きに集中していたので気が付かなかったのだ。予定よりかなり時間がかかっているので尾根まで抜けることは諦める。20m滝は両岸が絶壁に囲まれており少し戻っても岩壁は続くので高巻きはかなり困難に思える。登山大系では右岸をかなり苦労して高巻くとあり、会の記録でも右岸のここだけ樹木の生えたところをほとんど樹木だけを頼りに高巻きとある。ネットで見られる数少ない記録でも右岸のほぼ垂壁を灌木頼りに高巻くとあるが、ひとつだけ左岸を長く高巻いたというのがあった。観察すると左岸のルンゼ脇が灌木伝いに登れそうに見えた。右岸の灌木混じりの岩壁をモンキークライムよりは楽かもしれないと左岸から高巻くことにした。ロープを引いて登り始めるが下部は灌木もなくかなり立っている。慎重に登ると灌木の中に入りピッチを切り2人に登ってもらう。つるべで登ってもらいたいところだが上がどうなっているのか分からないので再び自分がリードする。狭い小尾根上のトップに出てピッチを切る。その上は急斜面のトラバースか岩壁を数m登って左の灌木に逃げるしかないようだ。岩壁を登ることにしたが岩が脆くてかなり悪い。掴んだ岩が抜けてきそうなほど脆くひとつひとつ確かめながら浮石を落とす。それでも岩壁に取りつき立ちこむことができない。結局効きの甘いハーケンを1枚にシュリンゲをアブミ代わりにそっと岩に乗りあがる。灌木の根を掴んで左の灌木帯に逃げて直上した。やれやれである。各々は30mほどの3ピッチで3人が登るのに2時間もかかってしまった。あとは下降点を探しながら急斜面の樹林の中を上流へトラバースしていく。後で見るとせいぜい150mほどのトラバースだったようだが長く感じた。やがて小尾根が見えたので下ると難なく沢に降り立つことができた。既に時刻は午後4時を過ぎている。この燕滝の高巻きに2時間45分もかかってしまったのだ。やはり右岸を高巻くべきだったというのは結果論。とにかく無事3つの大滝を越えることができたことを素直に喜びたい。
 上流へと15分ほど遡行すると登山道が沢を横断しているママ河原と呼ばれる場所に来た。ロープが渡してあり赤布も下げてあるので分かりやすい。この辺りの登山道を8月下旬に米沢山の会が整備したようで、その時に付けられたもののようだ。登山道は綺麗に刈り払いされており気持ちよく歩くことができる。車を置いた不忘閣ヒュッテ跡には17時過ぎに到着した。今日は高巻きばかりで沢を歩いたのは僅かだったねとお互いの顔を見て笑うしかなかった。
 今回は大平温泉から登山道横断点まで水平距離1キロほどの遡行に7時間半かかった。そのほとんどは高巻きの時間である。ロープを出した場合は出さずに同時に行動する場合の3倍ほどの時間がかかるといえる。ルートを上手く取ればロープを出さなくても高巻けるだろうが、我々は慎重にとにかくロープを出したということだ。還暦の自分に今年から沢登りを始めたばかりの西○さんと女性の羽○さんの3人と、決して強力とは言えないパーティーなので遡行できただけでも頑張ったといえるだろう。西○さんは肩に痛みがあったのでロープのリードは15m滝だけしてもらい、その他の滝や高巻きはすべて自分の役目となった。自分も前の日に腰痛が出て屈むと痛かったのだが、いざ遡行を始めるとそんなことはすっかり忘れてしまった。あらためて会の記録を見ると今回苦労した高巻きもあっさりと抜けたようで簡単にしか記述されていない。それもそのはずで大平温泉からママ河原までなんと1時間45分で駆け抜けている。我々の所要時間は7時間半なので4倍以上の差である。その当時ロープは使わずに遡行しているのだが、それでもそのスピードには驚嘆するしかない。会うことのなかった若き日の先輩たちと自分も一緒に遡行していたとしたら、いったいどんな沢登りができたのだろうと思わずにはいられない。あれこれ想像していると駆けるようにして遡行する先輩たちの姿が脳裏に浮かんでくる。今となっては空想の世界でパーティーを組んでみるしかない。(熊)

.ルート図 往路=赤 復路=青
この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の電子地形図(タイル)を複製したものです。(承認番号 令元情複、 第435号)この画像をさらに複製する場合には国土地理院の長の承認が必要です。

トラック 登り=赤 下り=青

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