焼石岳の東面を流れる尿前沢を
5年前に初めて遡行した。初秋の晴れ渡った日に陽光きらめく沢登りとなり、何て美しい沢なのだと感激したのだった。また行きたいと思いつつ再訪の機会を得ることが出来ないでいたが、今回企画したところパーティーを組むことが出来た。予報では今ひとつはっきりしない不安定な天気だが、山は行ってみなければわからないので決行することにした。
移動距離の大半は東北道での北上となるので、距離の割には時間がかからない。国道から登山口までは7キロ以上の未舗装林道があるが、白石インターから2時間ほどで中沼登山口に到着した。登山口の駐車場は広くトイレもある。準備をして7時 分にスタートした。金明水直登コースの登山道を22分で沢に突き当たる。尿前沢の水は晴れていれば青白く見えるのだが、今日は曇っているうえやや笹濁りで冴えない色だ。沢装備を整えて遡行を開始。すぐ6m滝があり右壁から越える。右岸からハタシロ沢、続いて風呂沢が出合うと、万円沢が左岸から出合い尿前沢は6m滝となる。右壁からフリーで登ったがメンバーによってはロープが欲しいところ。すぐ4m滝と3m滝をへつって越えるとミニゴルジュとなる。今日はやや水量が多いようで通過にやや手間取ったがそれもまた楽しい。
左岸がスラブ壁になると三ツ折の滝が現れる。一見スラブの左岸をトラバースして越えられそうに見えるが、他の記録によるとかなり悪いらしい。ここは前回同様に右岸から高巻いて懸垂下降で沢に戻る。ロープは50mなら余裕だが30mの場合は支点をより下の立木に取る必要がある。ここの高巻きに6人で30分弱を要した。続くゴルジュを水線通しに進むと沢は右に屈曲し12m滝となる。左岸のリッジから取付くと踏み跡をたどり小さく巻く。小休憩をしてから歩き出すと30m滝が現れる。もちろん巻きなので右岸のガレと草付きの境を登る。落ち口のレベルよりある程度上がったところから滝へ向かって岩壁をトラバースする。○樹さんがリードしてロープをフィックスしたが、上手い具合に落ち口に降りられるようにしてくれた。30mロープの場合は2ピッチになるだろう。この30m滝の巻きに約1時間を要したが、トラバースせずに小尾根を越して高巻いたほうが時間的には短いのではないだろうか。
その後も滝が続くがいずれも直登可能だ。やがて緑色をしたナメが続くようになる。グリーンタフだ。尿前沢の中でも美しいところなのだが、曇っているので今ひとつ映えないのが残念。そのうち雨が降り出してきたのでカッパを着る。堰堤のような7m滝は3人が左壁を登ったが、スタンス・ホールドが細かいので要注意。他の3人は左岸を巻いた。舗装道路のようなナメが200mほど続くと、二俣の夫婦滝(右俣が女滝で左俣が男滝)が見えてくる。昼を過ぎているので昼食にしたが、行動を停止すると寒いくらいだ。やっぱり沢登りには太陽が欲しい。
夫婦滝は左俣の男滝が本流だが前回同様左壁を登ることにする。ここも○樹さんがロープを引いて登ることになった。もろい岩肌で小石が落ちてくるが、取り付きから10mほど登ると傾斜が緩み一気にロープが延びる。50mなので落ち口まで余裕で届いたようだ。後続はロープがあるので楽ちんである。滝の上もナメになっていて登っていくと、4m滝・5m滝・20mナメ滝と続く。その上の10m滝は左岸をへつれるのだがちょっと難しいので、○樹さん以外は右岸を巻くことにした。左から枝沢を合わせ右手には草原が見えてくると10m滝が現れる。前回は水線沿いに直登したような記憶があり、八○さんと取り付くがどうにも難しくて登れない。周りを見ると右壁に残置ハーケンが2箇所あった。シュリンゲを掛けてクリアしたが、岩の上に乗りあげる一手が嫌らしかった。他のメンバーは左岸を巻いて登ってきた。
やがて左岸が露岩となり開けた源頭の雰囲気となる。やっと日も差してきて明るい沢となった。奥の二俣は計画では右俣に進んで焼石岳の山頂を踏むつもりだったが、予定より遅れているので前回同様左俣から登山道に出てそのまま下山することに変更する。左俣の15m滝を左壁から登ると沢はゴーロで高度を上げていく。水流は途切れることなく続き、やがて登山道が横断したので遡行を終了した。焼石岳の方を見ると少し紅葉が始まってきたようだ。ナナカマドも真っ赤な実をつけている。下山は登山道を2時間弱だった。(熊)