低山の紅葉もピークを過ぎ、季節は晩秋となってきた。沢登りの募集をかけてみたものの、手を上げる者はなかなか現れない。企画は流れるかと思われたが、H田さんが付き合ってくれることになった。彼女とは今シーズン何度目の沢登りだろうか。誰も手を上げてくれない時にずいぶん助けてもらった。遡行する沢は二口山塊の鳴虫沢にした。アプローチが容易で遡行時間が比較的短いので、この時期には合っている。先月9日、遡行中のアクシデントにより中退していたので、少々心残りだったと言うこともある。
二口林道の姉滝入口から遊歩道を下ると二口沢だ。ここが初めてのH田さんに姉滝のことを説明する。木々の葉は1ヶ月前とは様変わりで、紅葉が進んでいる。上流へと10分ほど歩くと鳴虫沢出合で、最初の4m滝を右岸から巻いて鳴虫沢に入る。すぐに釜のある4m滝で、H田に先行させると左岸をへつって登り越えた。3m滝をへつり、2段10m滝を右岸から高巻く。
先月アクシデントのあった4mナメ滝では、そのことをH田に説明した上で登らせてみた。するとヌメる岩に同じところで行き詰まってしまい、戻って反対側から登りなおしてきた。一見登りやすそうなラインも甘く見てはいけない。とにかく岩が滑るので、足を置く場所に細心の注意を払って遡行してしていく。ところがH田が小滝でスリップし、釜にドボンしてしまった。胸までずぶ濡れである。沢の中は日も差さないので、遡行を続けても大丈夫かと聞いたら大丈夫だという。これから気温も上がるだろうから遡行を続ける。2段6m滝を越え、見事に湾曲した柱状節理の左岸を見ながら左に曲がるとシシ滝が現れる。
鳴虫沢最大のシシ滝の高さは20mほどだ。右壁の直登は難しくはないが、高さがありスリップの心配もあるのでロープを出して登る。シシ滝を越えると大岩がゴロゴロしている巨岩帯となる。雪があちこちに残っていて視覚的には寒そうだが、実際には寒くないし足もあまり冷たくはない。。右岸から枝沢が滝で落ちるCS4m滝は、左岸から巻いて越える。やがて天然のアーチ橋、南石橋が正面に見えてくる。南石橋は鳴虫沢の左岸枝沢にあるのだが、鳴虫沢が左に曲がるので正面に見えるのだ。
南石橋を後にして5分ほどで両方が滝で落ちる二俣になる。右の本流を少し戻った左岸から高巻くことにする。落ち口の高さで草付きをトラバースする固定ロープが見えたが、信用できるか分からないので無視する。滑る泥壁のトラバースを嫌い結構追い上げられてしまう。H田にお助けロープを出して引き上げると、下降して本流に戻る。4年前はこのまま本流を辿ったが、今日は早めに稜線に上がろうと左俣を詰めることにした。本流から右岸急斜面を登り、小尾根を越えて左俣へ移る。雪の残る3段7m滝を登ると源頭を詰めていく。水流が消え雪が増えてきた。雪を踏みしめての沢登りはなかなか出来ない経験だ。斜面に日が当たるようになると、ヤブこぎ無しで楽に尾根に出ることができた。暖かい日差しを浴びながら遅い昼食にする。
尾根には三神歩道という明瞭な踏み跡があり、この道で下山する。地形図には記されていない道だが、結構知られているようだ。軽い登りで家形山を過ぎると下りとなる。途中に大東岳や磐司岩の眺めの良いところがある。姉滝の少し上流で二口沢に降りると、晩秋の沢登りも終了だ。神ケ根温泉(500円)でさっぱりして帰路についた。(K.Ku)