荒川の支流である石滝川は、朝日連峰最南端の祝瓶山から派生する西尾根を源とする。昨年遡行した金目川とは尾根を隔てて隣り合わせているが、渓相はだいぶ異なるようだ。石滝川は朝日連峰の沢の中では易しい沢といえ、魚影も濃いという。そのためか入渓記録は沢登りのものは少なく、源流指向の釣り師による記録が多く見られる。沢登りの記録としては、豊野則夫さんの「朝日・飯豊連峰の沢」があるが、最後まで詰め上げずに尾根を乗っ越して岩井沢から大石沢へと下降している。今回はあえてヤブこぎが長くなることを覚悟で、祝瓶山頂を目指す計画とした。
自宅を出るときは結構雨が降っている。雨の日の沢登りはテンションが上がらない。少し早く着いた道の駅「いいで」で待っていると、福島組が6:30過ぎに到着。シトシト降ってはいるが、とりあえず現地に向かうことにして出発する。走っているうちに雨も上がり、空も明るくなってきた。小国町中心部から荒川沿いに五味沢、そして針生平へと進み登山口に1台デポする。とって返し、集落を抜けて石滝川沿いに石滝林道を進むと、橋を渡って行き止まりとなる。数台しか停められないところに、釣り人と思われる先客の車が1台。支度をして8:55に草に覆われた林道跡を歩き始める。少し進んでから枝沢を下降し石滝川に降り立つ。斜度が無いので穏やかな流れといえるのだが、大岩がごろごろしていて随所で小滝を成している。石滝川の名前はここから来ているのであろう。小滝といえどまともに越えるのは容易ではないので巻いていく。巻くといっても高巻きではなくトラバース程度で踏み跡もあり、要所にはお助け紐やロープまで張ってある。それだけ釣り人が多いということだろう。ゆっくり歩いていたのだが、3人の釣りパーティーに追いついてしまった。時間も余裕があり諍いを起こすこともあるまいと、しばらく様子を見ていると、なるべく巻くことを条件に先行させてくれた。流れに入るのは必要最小限にして遡行を続ける。
やがて岩の裂け目のようなゴルジュの先に10mの直爆が現れた。見ると左岸から小さく巻けそうだ。他の記録にはロープが下がっていると書いてあったが見当たらない。ロープを引いて自分が登り始めるが、ズルズルと滑りやすく結構しょっぱい登攀となった。ここは要注意箇所といえる。記録にあるロープは途中で千切れたようで、上部にその名残があった。先ほどの釣りパーティーに、この10m滝のことを話してもピントこないようだったので、以後は遠慮無く流れに入ることにする。沢に戻ってすぐ登れない3m滝があり、左の岩陰からショルダーで登る。単独なら苦労するところも、3人であれば助け合って突破できる。次の小滝は右岸のハングした岩を回り込み、自分が空身で落ち口の流れに足をかけ、体を乗せようとしたところで足をすくわれドボン。続いて鈴Kさんがトライすると成功。ザックを引き上げてもらい、シュリンゲのお助けを出してもらう。この落ち口にはかなり古い残置ハーケンがあった。
その後も直登できるような小滝はなく、へつったりよじ登ったりしながら越えていく。倒木にキクラゲを見つけたので採りながら木の皮をめくると、ヘビがとぐろを巻いていたのでそっと皮を戻す。いやはや驚いた。右岸の岩壁を伝う枝沢を3本見送ると、やがて平瀬となり移動距離がはかどるようになる。テン場になりそうな所も散見されるようになると、ここは最適だろうと思われる場所が現れた。時刻はまだ14時前で、計画ではもっと先まで進む予定だったが、明日その分頑張ることにしてテン場に決定した。地形図では右に左に大きく蛇行を繰り返す最初のカーブの辺りだ。早速、食事担当のN井田さんは上流へと釣りに行く。イワナの調達が彼の任務だ。こちらは2人でタープを張り、薪を集めて火をおこす。午後もまだ4時前だが宴会開始。夕食はN井田さんのイワナ唐揚げと寿司に舌鼓を打つ。キクラゲは味噌汁にした。宴会開始が早かったせいか、午後8時過ぎに早々と就寝。
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