今夏の山行日程は8月14日から3日間を取ることができたが、行き先もパートナーも決まっていなかった。いっそ単独で縦走でもと思ったが、やはり沢登りをやりたい。山スキーでは何度かお世話になり、沢登りもやることを知っていた山形の○田さんに声をかけると大丈夫とのこと。2人合わせて115歳のおっさんコンビが遡行可能で、かつ簡単すぎないところという条件で考えたのは飯豊連峰の頼母木川上ノ小俣沢。この沢は1泊2日で遡行するパーティーもあるが、我々のレベルを考えればやはり2泊3日だろう。しかし、天気は台風の影響で2日目午後から下り坂の様子で、夜にはまとまった降雨がありそうだ。というわけで、2日目は頑張って稜線まで抜け、頼母木小屋に泊まることとした。その他にも雪渓やアブの心配があり、思惑どおりに行くかどうか、期待と不安が半々で向かうこととなった。
奥胎内ヒュッテ手前の駐車スペースで○田さんと合流。足ノ松登山口までは6時10分発の乗り合いタクシー(500円)で移動する。登山口までは約3キロなので、歩けば1時間弱だが10分で到着。登山口を横目にまっすぐ鉄柵の先へと歩いて行くと、やがて大きな砂防堰堤が見えてきて頼母木川に降りる。この堰堤は中央にスリットがあり、泳いでここから抜けるパーティーもあるが、我々は右岸のタラップを登って越えた。頼母木川のゴーロを歩いて行くと、両岸が狭まりゴルジュ地形となってくる。
最初の3m滝は少し泳いで右壁に取り付き越える。2m滝から本格的なゴルジュとなる。泳いで右から回り込んで水流に飛び込み左壁に取り付こうとしたが、水流が強くたちまち流されてしまう。作戦変更で右壁のリッジを4mほど登って向こう側へまたぐと、容易に越えることが出来た。S田さんは水流に押し戻されて右壁に取り付けない様子で、お助け紐を投げる。狭いゴルジュの中へと入っていくと、流れは蛇行し滝で深く落ち込み白く泡立つ。水流に落ちるとやっかいなので、右岸を緊張のへつりが続く。一見へつれないかと思われた3m滝は、右岸から左壁を空身で回り込み、フリクションで落ち口に上がる。続いてザックを引き上げS田さんにお助け紐を出す。その後もゴルジュは続くが沢はやや開けてホッとする。そのうち陽も当たってきて、明るい沢の快適な遡行が続く。
再び両岸が立ったゴルジュになると、左から小俣沢が出合う。小俣沢も狭いゴルジュなので、岩の回廊のT字路のようである。小俣沢に入るとすぐ小滝が続き越えていく。登れない小滝に4m滝は右岸のバンドから越える。続いて連瀑帯最初の6m滝が現れる。空身でロープを引き左壁のガリーを直上すると、ザックを2個引き上げてからS田さんを確保した。もっと水流寄りも登れるようではある。すぐ上の4m滝は登れないので、その上の8m滝、5m滝と一緒に右岸から高巻き、難なく沢床に降り立つ。
ナメ状の小滝を越えていくと7m滝が現れ、左壁を巻き気味に登る。20mの逆くの字滝は、さすがに直登は無理だが両岸から登られており、観察して右岸から登ることにした。取り付きの4m垂壁がヌメっているので、空身で登りハーケンで確保してザックを引き上げる。そこからは草付きの斜面をトラバース気味に落ち口まで巻く。沢に降りると単独と思われる新しい幕営跡があった。続く6m滝は右壁を快適に登る。その後もゴルジュは続くが、やがてやや開けてゴーロになる。空はどんよりと曇っていて降雨の気配もあるが、こんなところで降られてはかなわないので歩を進める。
右岸から枝沢が入ってきて、見ると奥に滝がかかっているので下ノ小俣沢のようだ。上ノ小俣沢と間違えて入ってしまう場合もあるようだが、滝の位置で容易に判別できる。3m滝に続く5m滝は、空身で左岸手前の凸岩をへつって回り込み、右壁を登ってザックを引き上げ○田さんを確保する。6m滝を右岸から越え、次の6m滝は左岸から越えると15時を過ぎ、そろそろテン場も気になってくる。8m滝は2条で右に大岩がチョックストーンのようにかかる。左岸の垂壁に空身で取り付き直上し、ハーケン1枚で落ち口に抜けた。ここまで何度も引き上げたザックは、あちこち岩角で擦れて傷だらけになってしまった。
滝の上では右岸がなだらかな草付きとなっている。16時も過ぎたのでここをテン場にすることにした。イタドリの林を刈ってタープを張ると快適な寝所となった。盛大な焚き火を眺めながら飲み始めると、○田さんのザックからは飲み物食べ物いろいろな物が出てくる。どうりでザックを引き上げるときにやけに重かったわけだ。軽量級の体なのに、よくぞ20キロはありそうなザックを担いで登ってきたものだと感心する。盛大な焚き火を眺めながら、今日の奮闘を振り返り心地よい酔いに身を任せる。午後9時半頃就寝。
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