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No.5382
上ノ小俣沢 飯豊連峰 頼母木川小俣沢
山行種別 無雪期沢登り
かみのこまたさわ 地形図

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山行期間 2016年8月14日(日)〜16日(火)
コースタイム 8月14日
奥胎内ヒュッテ(6:10)=登山口(6:24)→堰堤(6:45)→小俣沢出合(9:30)→逆くの字滝(11:15)→下ノ小俣沢出合(14:13)→テン場(16:07
8月15日
テン場(7:46)→上ノ小俣沢25m滝(8:50)→高巻き終了(11:25)→15m滝(12:58)→1,370m二俣(13:49)→1,440m二俣(14:23)→登山道(16:36)→頼母木山避難小屋(16:53)
8月16日
頼母木山避難小屋(7:57)→大石山(8:26)→登山口(11:06)→奥胎内ヒュッテ(11:52)
写真/記録 写真は拡大してみることが出来ます
8月14日
奥胎内ヒュッテ 登山口前から鉄柵の先へと進む 砂防堰堤(堤高24m)
頼母木川を遡行 最初の3m滝は右壁から 2m滝は右壁のリッジを回り込む
3m滝は空身で左壁を 大渕 快適な遡行が続く
左から小俣沢が出合う 狭いゴルジュの小俣沢 小滝を越える
連瀑帯最初の6m滝 すぐ上の4m滝 ナメ小滝を越えていく
7m滝 逆くの字滝 6m滝
ゴーロとなる 下ノ小俣沢出合 5m滝は右壁を
6m滝を右岸から 次の6m滝は左岸から 8m滝
左岸を登る テン場 盛大に焚き火をする

8月14日
 今夏の山行日程は8月14日から3日間を取ることができたが、行き先もパートナーも決まっていなかった。いっそ単独で縦走でもと思ったが、やはり沢登りをやりたい。山スキーでは何度かお世話になり、沢登りもやることを知っていた山形の○田さんに声をかけると大丈夫とのこと。2人合わせて115歳のおっさんコンビが遡行可能で、かつ簡単すぎないところという条件で考えたのは飯豊連峰の頼母木川上ノ小俣沢。この沢は1泊2日で遡行するパーティーもあるが、我々のレベルを考えればやはり2泊3日だろう。しかし、天気は台風の影響で2日目午後から下り坂の様子で、夜にはまとまった降雨がありそうだ。というわけで、2日目は頑張って稜線まで抜け、頼母木小屋に泊まることとした。その他にも雪渓やアブの心配があり、思惑どおりに行くかどうか、期待と不安が半々で向かうこととなった。
 奥胎内ヒュッテ手前の駐車スペースで○田さんと合流。足ノ松登山口までは6時10分発の乗り合いタクシー(500円)で移動する。登山口までは約3キロなので、歩けば1時間弱だが10分で到着。登山口を横目にまっすぐ鉄柵の先へと歩いて行くと、やがて大きな砂防堰堤が見えてきて頼母木川に降りる。この堰堤は中央にスリットがあり、泳いでここから抜けるパーティーもあるが、我々は右岸のタラップを登って越えた。頼母木川のゴーロを歩いて行くと、両岸が狭まりゴルジュ地形となってくる。
 最初の3m滝は少し泳いで右壁に取り付き越える。2m滝から本格的なゴルジュとなる。泳いで右から回り込んで水流に飛び込み左壁に取り付こうとしたが、水流が強くたちまち流されてしまう。作戦変更で右壁のリッジを4mほど登って向こう側へまたぐと、容易に越えることが出来た。S田さんは水流に押し戻されて右壁に取り付けない様子で、お助け紐を投げる。狭いゴルジュの中へと入っていくと、流れは蛇行し滝で深く落ち込み白く泡立つ。水流に落ちるとやっかいなので、右岸を緊張のへつりが続く。一見へつれないかと思われた3m滝は、右岸から左壁を空身で回り込み、フリクションで落ち口に上がる。続いてザックを引き上げS田さんにお助け紐を出す。その後もゴルジュは続くが沢はやや開けてホッとする。そのうち陽も当たってきて、明るい沢の快適な遡行が続く。
 再び両岸が立ったゴルジュになると、左から小俣沢が出合う。小俣沢も狭いゴルジュなので、岩の回廊のT字路のようである。小俣沢に入るとすぐ小滝が続き越えていく。登れない小滝に4m滝は右岸のバンドから越える。続いて連瀑帯最初の6m滝が現れる。空身でロープを引き左壁のガリーを直上すると、ザックを2個引き上げてからS田さんを確保した。もっと水流寄りも登れるようではある。すぐ上の4m滝は登れないので、その上の8m滝、5m滝と一緒に右岸から高巻き、難なく沢床に降り立つ。
 ナメ状の小滝を越えていくと7m滝が現れ、左壁を巻き気味に登る。20mの逆くの字滝は、さすがに直登は無理だが両岸から登られており、観察して右岸から登ることにした。取り付きの4m垂壁がヌメっているので、空身で登りハーケンで確保してザックを引き上げる。そこからは草付きの斜面をトラバース気味に落ち口まで巻く。沢に降りると単独と思われる新しい幕営跡があった。続く6m滝は右壁を快適に登る。その後もゴルジュは続くが、やがてやや開けてゴーロになる。空はどんよりと曇っていて降雨の気配もあるが、こんなところで降られてはかなわないので歩を進める。
 右岸から枝沢が入ってきて、見ると奥に滝がかかっているので下ノ小俣沢のようだ。上ノ小俣沢と間違えて入ってしまう場合もあるようだが、滝の位置で容易に判別できる。3m滝に続く5m滝は、空身で左岸手前の凸岩をへつって回り込み、右壁を登ってザックを引き上げ○田さんを確保する。6m滝を右岸から越え、次の6m滝は左岸から越えると15時を過ぎ、そろそろテン場も気になってくる。8m滝は2条で右に大岩がチョックストーンのようにかかる。左岸の垂壁に空身で取り付き直上し、ハーケン1枚で落ち口に抜けた。ここまで何度も引き上げたザックは、あちこち岩角で擦れて傷だらけになってしまった。
 滝の上では右岸がなだらかな草付きとなっている。16時も過ぎたのでここをテン場にすることにした。イタドリの林を刈ってタープを張ると快適な寝所となった。盛大な焚き火を眺めながら飲み始めると、○田さんのザックからは飲み物食べ物いろいろな物が出てくる。どうりでザックを引き上げるときにやけに重かったわけだ。軽量級の体なのに、よくぞ20キロはありそうなザックを担いで登ってきたものだと感心する。盛大な焚き火を眺めながら、今日の奮闘を振り返り心地よい酔いに身を任せる。午後9時半頃就寝。

8月15日
8m滝 大岩のゴーロが続く 左岸よりガレ沢
右岸より25m滝が落ちる 正面ガレ沢を登る 右岸に取り付く
小尾根から見下ろす上ノ小俣沢 懸垂下降45m 8mヒョングリの滝
7m滝 5m滝 15m滝
左壁を登る○田さん 1370m二俣 2段8m滝
この後にヤブ突入 ひたすらヤブを漕ぐ やっと稜線へ

8月15日
 7時46分テン場を出発。今のところ天気は良い。すぐ8m滝が現れ、空身なら残置のある左壁の斜上バンドから、なんとか登れそうに見える。しかし、どうにも朝一番からトライする気分にならず、左岸の灌木混じりの草付きを高巻いて沢に戻る。大岩のゴーロで高度を上げていくと、空は朝の天気はどこへやらの曇天で、午後からの降雨が心配になってくる。出発から1時間近くで左岸よりガレ沢が合わせる。本流筋もガレ沢に近い感じになり、先へと真っ直ぐ延びているように見えるが、ほどなく右岸に堂々とした25m滝が現れる。上ノ小俣沢出合である。
 城壁のような右岸から水を落としている姿は関門のようである。観察すると左壁から登れそうにも見えるが、それは今回の目的では無いのでさっさと高巻くことにする。真っ直ぐガレ沢を登り、右岸の斜度が落ちたところで取り付いた。途中までフリーで登ってからロープを2ピッチ延ばすと小尾根についた。下をのぞき込むと上ノ小俣沢が見え、いくつかの滝も確認。このままトラバースして大高巻きか懸垂下降するかだが、懸垂することにして20mほどクライムダウン。すると突然ザーッと雨が降り始めた。予想よりかなり早い。このまま降られると増水して遡行できなくなるので非常にまずい。まだかなりの高さだが、50mロープ連結でなんとかなるだろうとロープを投げる。45mの懸垂下降で沢に降り立つと、雨は止みホッとする。この高巻きで2時間以上を要したが、もっと下でトラバースして小尾根を越えれば、所用時間は短くてすんだだろう。
 休憩してから遡行再開。8mヒョングリの滝は左岸草付きで高巻き、次の7m滝は右岸から越える。1170mで左に枝沢を見ると5m滝で、右岸から越える。順調に高度を上げていくと、1235mで数人が泊まったようなテン場跡があった。やがて15m滝が立ちはだかる。他のいくつかの記録では左岸草付きから高巻いているが、S田さんは左壁が登れるだろうと取り付く。後に続くが結構しょっぱい登攀となり、最後の草付きトラバースではロープを投げてもらった。こういう登りでは百戦錬磨の○田さんにはかなわない。
 15m滝を過ぎれば大きな滝は出てこないはずなので、やれやれと気持ちが軽くなる。13時を過ぎたところなので、16時には頼母木小屋に到着できるだろう。源頭も近いはずだが、沢はまだ深く切れ込んでいる。1370mで左岸の枝沢を見送るとすぐ二俣になる。水量は1:3で明らかに右俣が多いが、頼母木山なら左俣だろうと進む。3m滝、2段8m滝と越え、1440mの二俣で左へ進んだが、どうもこれが間違いだったらしい。やがてヤブが被さるようになり沢形を見失う。そのまま登っていくと背の高い笹ヤブに突入する。ヤブ漕ぎをひたすら2時間近く続けた末、頼母木山頂のすぐ南側でやっと登山道に出た。他の記録では「詰めはお花畑と穏やかな草原」とか「草付きを登り詰めると藪漕ぎ無しで登山道へ」などどあるのにやれやれである。最後にとんだアルバイトをしてしまったものだ。頼母木山を経由して頼母木山避難小屋には16時53分に到着。天気のせいか小屋は貸し切りで、ゆったりと広く使って反省会ならぬ宴会をする。夜には風が吹き雨も結構降ってきたので、小屋泊まりとして本当に良かった。 

8月16日
シルエットの頼母木山 遠くに朝日連峰 えぶり差岳
花に見送られ下山する 大石山の足ノ松尾根分岐
尾根途中の小俣沢ビューポイント
間もなく登山口 頼母木大橋 お疲れ様でした

8月16日
 3日目は雨天を覚悟していたのだが、起きると晴れているではないか。これだから天気は分からない。下山していくとどんどん天気は良くなり暑くなった。大汗をかきながら足ノ松尾根を下る。3時間ちょっとで登山口に到着。平日は早い時間の乗り合いタクシーが無いので、奥胎内ヒュッテまでゆっくり歩く。それでも昼前には到着。ヒュッテで入浴し3日間の汗を流した。

※50mロープを各々担いだのでザックはかなり重くなった。ザック重量は自分が18キロで、いろいろ持ってきたS田さんは20キロ近かっただろう。年齢も考えると軽量化は必須だ。
※自分のクセというか弱点として、往々にして滝の高巻きで登りすぎてしまうことがある。今回もそうだった。精進あるのみだが、高巻きは天性のカンという部分もあるので難しい。
※詰めのヤブこぎは痛恨のミスルートだった。これもやはりセンスの問題かもしれないが、そうばかりも言ってはいられない。
※頼母木山避難小屋の管理人さんによると、我々が泊まった前日に単独で上ノ小俣沢を遡行した男性が泊まったのだが、我々同様に2時間のヤブこぎをして午後7時過ぎに小屋に着いたのだという。また、数日前には若い男女の数人パーティーが上ノ小俣沢を遡行し、門内岳避難小屋に泊まったという。我々が見たテン場跡は彼らのものだったのだろう。(K.Ku)

ルート
この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の電子地形図(タイル)を複製したものです。(承認番号 平28情複、 第162号)この画像をさらに複製する場合には国土地理院の長の承認が必要です。
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