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No.5165
蔵王・八方沢 最上川水系馬見ヶ崎川支流
山行種別 無雪期沢登り
ざおう・はっぽうさわ 地形図

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山行期間 2015年8月16日(日)
コースタイム 蔵王ダム管理所(5:52)→入渓(6:38)→F1・5m(7:09)→F2・6m(7:46)→F3・2条5m(9:36)→F4・6m(10:46)→F5・6m(11:48)→名号沢出合(12:01)→休憩(12:20,12:38)→F6・12m(12:42)→二俣(13:34)→12m滝(14:03)→両門の滝(14:15,14:24)→登山道(15:29,15:43)→蔵王ダム管理所(17:10)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
ゲートを越えて進む 入渓地点では頭上に吊り橋のケーブルが残る 最初から両岸が立っている
左岸の支沢が滝となって落ちる 水に入らなければ進めない 泳いで釜のあるF1・3m滝に取り付く
右岸奥の滝で落ちる南雁戸沢 F2・6m滝は右岸巻き 落ち口の上に下降する
10m滝で落ちる左岸の枝沢 岩屑で埋まった右岸枝沢出合(奥に滝が見える) 水の透明度が高い
楽しい?へつり F3・2条5m滝 2週間前のパーティーのお遊びか?
テン場跡 F4・6m滝 F5・6m滝
水流右を直登 名号沢出合 F6・12m滝
水流左を直登 二俣の右俣は4m滝 3〜5mの滝が続く
いずれも容易に越えられる 右岸枝沢と12m滝 12m滝は水流左を直登
両門の滝 右俣の滝 登山道で下山する

行動記録
 八方沢は北蔵王の沢で熊野岳と地蔵岳に源を発する。蔵王ダムからのアプローチは容易だが、遡行距離が長いこともあり、登山大系では遡行時間が12〜15時間とされている。そのためか、見かける記録は1泊2日で遡行されているものがほとんどだ。しかし、地元のパーティーなどは日帰り遡行をしており、今回もスピーディーに1日で完結してみようと考えた。
 蔵王ダム管理所に車を停めさせてもらう。蔵王ダムは昭和45年に完成し、かんがい用水と併せて山形市に水道用水を供給しているダムである。沢支度をすると、ゲートの脇を通ってダム湖左岸沿いの道へ進む。以前は車が走っていた道も今は役目を終え、各所で崩れていて徒歩でしか入ることが出来ない。葉ノ木沢に架かる橋を渡り尾根を回り込むと、右に下山で使う登山道の取り付きがある。なお進むと道は細くなり、植林地を過ぎて八方沢へと下り始める。急斜面を沢へと下降していると子熊と遭遇した。過去の記録でも八方沢は熊との遭遇事例が多く、用心していたが初っ端から出遭うとは思わなかった。小熊は去っていき、親熊は現れなかったので沢へと降りる。雁戸山への登山道に架かっていた古い吊り橋の残骸があった。対岸の取り付きにピンクテープがあったので、今でも歩く人がいるのだろう。
 沢を歩き始めてしばらくは特に変化はないが、やがて左岸より落ちる滝が見えてくる。高さがありなかなか見事だ。八方沢は地形図からも分かるように、全体的に深く切れ込んでおり両岸が立っている。この滝から先は沢登りの領域になり、泳ぐほどの淵が現れてくる。やがて深そうな釜のあるF1の3m滝。へつりは両岸とも厳しく、水流は右岸側が強いので左岸側から泳ぐしかなさそうだ。最初に3人の中では一番若い○樹さんに泳いでもらう。ロープを引いて右からへつり泳いで取り付くと、あっさり滝を越えていった。それを見て50代2人も続き、スタンスがちょっと微妙だったが、お助け無しで滝を越えることができた。
 南雁戸沢が右岸から合わせると、F2・6m滝が現れる。この滝は直登が難しいので巻くことになる。記録では左右どちらからも巻かれているが、左岸は大高巻きになりそうなので右岸を巻くことにした。左壁の取り付きはショルダーで◯樹さんを押し上げ、そのままリードしてもらい2人が続く。潅木を掴んで下降すると、上手い具合に落ち口のすぐ上に降りることが出来た。なお、我々の2週間前に遡行している記録があり、なんとこのF2を直登している。泳いで取り付き水流左をハーケン2枚で直登しているのだが、2人で2時間とかなり苦戦したようだ。
 遡行を続けると切り立った両岸のあちこちが崩落しており、沢にも真新しい岩屑が堆積している。またいくつもの枝沢が高さのある滝となって落ちていて、その景観に思わずホーと声が出る。中には奥に滝が垣間見えるものの、出合付近がすっかり岩屑で埋まっている枝沢もある。八方沢は小滝でも深い釜があるものが多く、水に入ったりへつったりと楽しい。暑い日なら積極的に泳いでもいいだろうが、今日はそれほど暑くなく水も冷たいのでなるべくへつって遡行していく。F3・2条5m滝が現れるが、これは右から容易に登ることが出来る。
 やがて右岸がなだらかになり、テン場になりそうな所だなと見ると焚き火跡があった。おそらく1週間前のパーティーだろう。大釜のあるF4・6m滝が現れる。観察すると水流左が登れそうなので、空身で泳いで取り付き偵察してみた。上部がちょっと微妙そうなのでさっさと右岸から巻くことにした。ここはパーティーによって巻くか直登か分かれるだろう。ここも○樹さんのリードで楽させてもらう。小滝をいくつか越えていくと、釜はあるが優しい印象のF5・6m滝。2人は左岸からへつり、自分は泳いで取り付いて水流右を軽快に直登する。左から出合は穏やかな流れの名号沢、小滝沢と見送り昼食休憩とする。ここまでは順調に進んでいるので、ヘッデンを使わずとも済みそうだ。
 遡行を再開するとすぐF6・12m滝が現れる。ここは一見厳しそうだが、水流左を登れるらしい。最後くらいはリーダーらしさを見せようと左から釜をへつっていくが、最後の一歩が微妙に遠くて水流に近づけない。では手前から登ろうと探るがそれも難しい。しばらく迷ったが、落ちるのを覚悟で思い切って飛んでみた。するとなんとか成功。水流左の岩壁を探ってみると結構ホールドがあり、そのままリードして登る。続いて○樹さんが快適快適と言いながら登ってくる。ラストの鈴○さんを確保しているとロープにテンションがかかった。直接姿は見えないが落ちたようだ。へつり直して再度落ち3度目で登ってきたが、冷えてしまった鈴○さんの手は震えていた。夏とはいえ沢の水は冷たい。こんなこともあるので、フリーで登れるとはいえロープは積極的に出した方が良い。特に我々のような中高年パーティーならなおさらだ。
 1,190mの二俣は、1:1で右俣が4m滝で合わせる。右俣のほうが早く登山道に出られるが、今日は滝が続くらしい左俣に進むことにした。左俣には大岩がゴロゴロしていて流倒木がやたら多い。しかも腕が回りきらないような大木が多いのには驚いた。3〜5mの滝をいくつか越えていくと、2つの高さのある滝が見えてきた。奥の二俣かと思ったがよく見ると違う。右岸から枝沢が20m滝で落ち、正面に12m滝がかかっているのだ。この滝は高巻きの記録も多いが、ホールド・スタンスがしっかりあるので、水流左を快適に直登する。
 上に出ると目指していた両門の滝が目に入る。滝で出合う二俣で、水量は少ないが断崖から水を落とす姿はなかなかの眺めだ。高さは右を25m、左は20mと見込んだがどうだろうか。さてどうしようかと眺め、右俣を詰めるため左岸を高巻くことにした。高巻き始めるとかなりの急斜面にどんどん追い上げられる。沢に戻ってもすぐ登山道に出ると思われるので、計画変更しこのままヤブを漕いで登山道を目指すことにした。コンパスで方角を確認しながら西に進み、高巻き開始から約40分で登山道に出た。ひと息ついてから小走りで下山し、1時間半ほどでダム管理所に到着した。
 今回は水量が多くなかったのでスムーズに遡行できた。登攀的な滝は少ないが、泳ぎあり、へつりあり、滝の直登に高巻きと、沢登りの様々な要素があり飽きさせない。簡単すぎず難しすぎずと楽しめる沢なので、泊まりでゆったりと遡行するもよし、足並み揃えて日帰りでスピーディーに遡行するのもよい。ただし、必ず水に入ることになるので気温の高い時期を選ぶとともに、釜で白く泡立っているサラシ場や複雑な流れには注意が必要だ。初級者だけでの入渓は避けたほうが良い。高巻きでは懸垂下降しなかったが、大高巻きしてしまうと30mロープでは足りない場合もありうる。また、両岸が切り立っている区間が多く、途中でのエスケープは難しいことも念頭におきたい。八方沢では今回に限らず熊との遭遇例が多い。脅かすわけではないが、入渓するパーティーはそのつもりでいたほうがいいだろう。なお、八方沢はダム近くの下流部で釣れるというが、今回は入渓点からずっと魚影を見ることは無かった。(K.Ku)

遡行図


ルート



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