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No.5147
蔵王・鳥戸沢 名取川流域北川小屋の沢支流
山行種別 無雪期沢登り
ざおう・とりとさわ 地形図

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山行期間 2015年7月11日(土)
コースタイム 入渓(7:23)→屈曲部(9:35,9:51)→函の8m滝(10:26,11:48)→休憩(12:00,12:25)→登山道(14:35,14:52)→雁戸山(15:08,15:21)→八方平難小屋(16:10)→小屋の沢林道(17:24)→駐車地点(17:45)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
橋の先に駐車スペースがある ゴーロ歩きが続く 5m斜滝
7m滝 釜のある8m滝 6m滝
左右に分かれて登る 2条8m滝 屈曲部のスラブ
3m滝が見えてきた 3m滝は2つのラインで登る 頑張る羽◯君
古いシュリンゲのある2m滝 3m滝
切り立った両岸
函の奥に8m滝 滝の直登は無理 左壁を直登する
バンドのトラバース スラブのトラバースが嫌らしい 落ち口も気を抜けない
一転し開ける 小廊下が続く 森の中を流れる
鞍部へと詰め上がる 登山道に出た 雁戸山山頂
南雁戸山 雁戸山 八方平避難小屋

行動記録
 鳥戸沢は北蔵王の雁戸山に突き上げる沢だ。先々週遡行した大鍋沢と同じ小屋の沢の支流の沢である。登山大系には「北蔵王ではもっともポピュラーな沢である」と記載されていて、遡行時間は6〜7時間、滝は最大でも10mで難しい沢ではないようだ。登山大系の他には白山書房の「日本の溪谷'96」にトマの風による2日間での遡行記録があることからも、以前はそれなりに登られていたのだろうと思える。しかし、ネットで見つけた近年の記録は3本だけで、いずれも詳しい記載はなく、しかもうち2本は中途退却である。中途退却の理由は何だったのか知りたくなり、興味が湧いてきた。
 国道286号から小屋の沢沿いに林道を進み、4kmほどで橋がある。鳥戸沢に架かっているのだが、橋の銘板はなぜか「鳥胴沢」とある。橋を渡ったたもとに2台分のスペースがあり車を停める。今日のメンバーは4人だが、初心者は羽◯君だけだ。沢支度をして鳥戸沢に入渓する。入渓点の標高は520mほどで、今日の最高点になるであろう雁戸山頂は1484m。1000m近い単純標高差は、日帰りの沢登りとしては大きい方だろう。鳥戸沢は入渓から平凡なゴーロが続く。滝とは言えない程度の段差が時々出てくるだけだ。ほぼ1時間歩いたところで小滝があり高さ2mと記録する。が普段なら記録しない程度の小滝だ。両岸が杉の造林地から明るい広葉樹林に変わっても、まだゴーロが続く。入渓から1時間半でやっと5m斜滝が現れ、一同喜んで登る。続く7m滝も右から越えるとすぐ釜のある8m滝。釜に入って滝に打たれるのも一興だろうが、まだそこまで暑くはない。左右どちらからも登れそうだが、我々は右から登った。
 右から岩壁を伝う20m滝の枝沢を見送ると6m滝になる。自分は右から3人は左から水流脇を登る。やや滑りやすいので、初心者にはお助けを出したいところだ。次の2条8m滝も右から登る。正面にスラブ壁が現れると沢は右へ大きく曲がる。屈曲部で休憩としたが、草がまだ小さく雪渓が最近まで残っていたことを窺わせる。見上げるスラブ壁は40m以上あろうか。登るとしたらこのラインかなどと考えてみるのも面白い。上部がツルッとした3m滝はどう登ろうかと思案する。○樹さんは右岸をへつり登ったが、自分は滝左端の凹からボルダリングのように登る。登り方はひとつではなく、それが沢登りの面白さでもある。
 今度は左に曲がる狭いゴルジュに2m滝があり、そのすぐ先にも滝が見える。2m滝はツルッとして取り付けないが、見ると水流左にシュリンゲが下がっていた。かなり古いもののようだが、トマの風の記録に「残置ハーケンにシュリンゲをかけて登る」とあり、もしかするとその時の20年前のものではないだろうか。シュリンゲに静かに体重をかけ、流木も使って2m滝を登る。すぐの4m滝もツルッとして難しい。自分は右壁にハーケン1枚打って登れずジタバタしていたが、◯樹さんが左の滝身からフリーでいつの間にか登っていた。お助けを出してもらって残り全員ゴボウで登った。ここはショルダーで突破する手もあるだろう。
 すぐ上でゴルジュは函となって突き当たり8m滝が落ちる。滝はハングしており、見るからに直登は無理だろう。左岸からはとても巻けそうにない。右岸はと見れば岩壁の上は急なスラブになっているが、その境目は狭いバンドになっていて滝の落ち口に続いている。岩壁にはかなり古い残置ハーケンも見つかった。そういえば記録にもトラバースとあったが、おそらくここのことだろう。身軽な◯樹さんに空身で登ってもらうことにする。ハーケンを打ち足しながら工作してもらうが、トラバースに移るところで時間がかかっている。下から見るより足場が悪いらしい。それでも落ち口までトラバースしてロープを固定する。続いて八◯、羽◯の順に登ったが、羽◯君はしきりに「怖い」と言っていた。自分はザックを2つ背負ってのラストだが、登ってみるとトラバースが悪い。トラバース部分にも数ヶ所残置があったが、滑りやすい岩質のスラブはかなりヒヤヒヤものだった。結局、4人でここを突破するのに1時間半ほどかかった。◯樹さんがいなければ、もっと難儀したであろう。この沢ではここが核心部である。
 函の上は一転、開けた穏やかな渓相になったので、昼食休憩にして一息つく。上流部の右岸は磨かれたスラブになり小廊下が続く。小滝はあるが、いずれも楽しく越えることができる。小廊下が終わると、森の中を流れる穏やかな渓流となり続く。雁戸山も垣間見えるようになってくる。やがて伏流となり水流が消えると源頭の雰囲気になり、一時は水流も復活するが本流は徐々に不明瞭になってくる。このまま詰めれば雁戸山と南雁戸山の鞍部に突き上げるのだが、今日は雁戸山と西茶畑の鞍部に出ることにしている。この辺だろうと右に進路を振り、鞍部へ突き上げる沢筋を追う。最後に十数分のヤブこぎをすると、尾根の登山道に出た。
 休憩の後、登山道で山頂へと登る。雁戸山が初めてだという八◯、羽◯両君に、360度の眺めを楽しんでもらい下山にかかる。南雁戸山から八方平と展望の良い稜線を歩き、避難小屋からブドウ沢林道を下る。小屋の沢林道に出ると20数分で駐車地点である。
 鳥戸沢は大滝こそ無いが、核心の8m滝があることにより、なかなか楽しめて遡行の充実感があった。核心の8m滝がなければ、現代ももっと登られていたのかも知れない。この滝を越えるには、今回のようにリードできるメンバーがいなければならない。バランスの悪くなった中高年パーティーには、この滝は難しく敷居が高いだろう。手間取ると1日で遡行できないことも考えられる。遡行パーティーが少ないのは、そのことが要因かも知れない。今回ここに記録をアップしたので、興味のある方には是非遡行してもらいたい。なお、なんとMさんの1966年の遡行図も見つかった。(K.Ku)

遡行図 遡行図は拡大することが出来ます


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