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No.5029
飯豊連峰・タカツコ沢 阿賀野川水系一ノ戸川支流大白布沢
山行種別 無雪期沢登り
いいでれんぽう・たかつこさわ 地形図

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山行期間 2014年10月19日(日)
コースタイム 川入駐車地点(5:20,5:48)→御沢キャンプ場(6:12)→大白布沢入渓(6:41)→タカツコ沢出合(6:46)→十五里沢出合(7:15)→オッカエシ沢出合(9:24)→スラブ帯(11:09)→三国岳(11:50,12:23)→御沢キャンプ場(14:09)→川入駐車地点(14:33)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
川入地区の臨時駐車場からスタート 廃屋となった飯豊鉱泉の先で災害復旧工事中 ひっそりした御沢キャンプ場
堰堤を越えると豪雨の爪痕残る河原 大白布沢 タカツコ沢
十五里沢出合の二俣 最初の5m滝 8m滝は左岸より小さく巻く
7m滝を直登 10mナメ滝 明るい沢に青空と紅葉が映える
水が煌めく 今回唯一の懸垂下降 5m斜滝を登る
7m滝の凹角に体を押し込み登る オッカエシ沢出合の二俣 地蔵山から剣ヶ峰への稜線が見えてきた
左へ大きく曲がる 3〜4m滝が続く 水が涸れてきた
20mの空滝 ロープを出して登る スラブを登る
高度感がある Tさんはスタスタ登っていく 山頂直下は傾斜が強まる
あと一息 三国岳避難小屋 縦走パーティーもいた山頂
剣ヶ峰の岩稜を下る タカツコ沢源頭部のスラブ ブナの黄葉が美しい

行動記録
 東北の沢登りシーズンは概ね6月から10月の5ヶ月間となる。その間に沢は残雪から新緑、水の煌めく盛夏から紅葉へとドラマチックに変化する。沢登りを始めてから、より強く四季の移ろいを感じるようになったのは、そんな自然の変化を目の当たりにすることになったからだろう。長いようで短い沢登りシーズン、それも終盤となってきた。天候が安定すると見込まれるこの週末の沢登りとして、飯豊連峰三国岳の南東面を源とするタカツコ沢を検討してみた。険谷が多い飯豊連峰の沢の中では、タカツコ沢は初級の沢とされている。三国岳山頂には避難小屋があることから、小屋泊まりで2日間かけて遡行する場合も多いようだ。しかし、出発を早くすれば日が短くなってきた10月でも、十分日帰り遡行が可能に思えた。今回のパーティー3人とも日曜日しか空いてなかったこともあり、日帰りの軽いザックで一気に遡行する計画とした。
 タカツコ沢は阿賀野川水系一ノ戸川大白布沢の支流であり、福島県の喜多方市川入から入ることになる。朝3時に自宅を出て5時20分頃に川入集落に到着すると、S君は既に着いて待っていた。川入集落から御沢キャンプ場までの道は、昨年7月の豪雨により林道が流され、現在も集落の先で通行止めとなっている。臨時駐車場に車を置いて歩き、24分で現在休業中の御沢キャンプ場。
 登山口から杉の植林地に入り、三国岳への分岐を右に見送り歩くとやがて堰堤が見えてくる。道なりに登って堰堤を越えると、かなり幅広い河原が目に入る。しかし、河原と思ったのは左岸の道のあった部分で、昨年の豪雨で流されてしまったようだ。河原の赤テープを辿り大白布沢に入渓すると、沢装備を身につけ朝日を背に受けながら歩き始める。小滝を越えるとすぐタカツコ沢出合の二俣となる。タカツコ沢に入ると、増水時はさぞかしと思わせるような幅広いゴーロが続き、30分ほどで右から十五里沢(750m)が合わせる。
 すぐ5m滝があり右から直登する。3m滝、小滝と越えていくと、沢は8m滝で右へ屈曲する。Tさんが水流右から直登を試みるが、水飛沫がかかるので断念し小さく巻いた。この辺りから沢の中にも朝日が当たり始め、水流が眩しく輝くようになる。その後も次々と3〜5m程度の滝が続くが、いずれも直登か小さな巻きで越えることができる。飯豊の沢と身構えて来ると、何か肩すかしを食らったような気にもなる沢なのだ。胸がきりきりするような緊迫感のある沢も充実していいのだが、こんな明るくほどよい感じの沢もまたいいものだ。この沢の岩は花崗岩なので、基本的にフリクションは良い。ただし、小さな凹凸もないほど水流で磨かれた花崗岩の場合は、フェルトよりラバーの方が相性が良い。自分のフェルトはすり減っているのでなおさらそうだ。10mのスラブ滝というかナメ滝はつるんとしていてフェルトでは登りにくく、ラバーのTさんにお助けヒモを出してもらう。
 タカツコ沢は全体的に開けていて、暗いところがほとんど無い明るい沢だ。特に快晴の今日は、青空と紅葉と白い岩に水流の取り合わせがとりわけ美しく感じる。良いタイミングでの遡行に我々も癒されるようだ。4mほどの滝が現れ左岸から小さく巻いたところ、岩が立っていて降りることができなくなり、残置シュリンゲを利用して懸垂下降する。右岸から巻くか、左岸をすぐ上の滝もまとめて巻けば懸垂下降は必要ないだろう。しばらくゴーロが続き、右岸を伝う水量の少ない枝沢を見送ると5〜7mの滝が続く。その中に左岸側の岩がちょっとかぶった、釜のある5mの細い斜滝があり3人3様で越える。自分は左からへつり、水流を右に飛び越えて水流脇を登る。S君は右岸から、Tさんは左岸から上の滝も一緒に巻いたが、左岸の巻きは高さもあり避けた方が無難。すぐ上の7m滝は左の凹角に体を押し込んで登る。
 沢がさらに開けるとオッカエシ沢出合の二俣だ。紅葉の稜線が近くに見えてきた。水量は少なくなり沢の斜度が増すと、赤茶色の岩や土砂も現れてくる。正面には登山道のある地蔵山から剣ヶ峰への稜線が見えてくる。水が涸れる前にと枝沢から水を補給する。沢が大きく左へ曲がると日陰になり少し肌寒い。少し黒っぽい岩の3〜4m滝をいくつか越えると、再び陽の当たるゴーロとなる。伏流となったのか水流は見えなくなった。
 ほとんど水が流れていない茶色の3m滝と4m滝を越えると、20mの空滝に突き当たる。観察すると自分は左のリッジなら登れそうだが、Tさんは中央のスラブも右壁もフリーで登れそうだという。そんな怖いことは勘弁して欲しいので、ロープを引いて中央スラブを登ってもらうことにした。後続の2人はロープがあるとはいえ、フェルトが滑りそうで緊張の登攀となる。滝の上に出ると視界をさえぎるものはなく、広いスラブが山頂まで続いている。避難小屋の屋根も見えてきたので、真っ直ぐ小屋目がけて登ることにした。
 スラブの傾斜はロープを出すほどでもない。気は抜けないが気持ち良く登っていくことができる。スラブの高度感が、心地よい緊張感と開放感になり体を満たす。2箇所ほど空滝状で傾斜の立ったところもあったが、迂回せずにそのまま直登していく。今年から沢登りを始めたS君だが、初体験のスラブはどんな印象だろうか。最後に傾斜が強くなり潅木をかき分けよじ登ると、避難小屋の15m東で登山道に出た。
 風もなく穏やかなので、小屋前でゆっくり昼食休憩とした。西に見える大日岳を眺めると、東面の沢にはかなり雪渓があるのが見える。登ってきたスラブを眺めながら下山を始める。地蔵岳山頂をカットして早足で下ると、川入まで2時間10分で着いてしまった。帰りは白川荘の温泉(400円)で汗を流し帰宅した。
 タカツコ沢は特段難しいところもなく、水に浸かるのも膝程度までである。飯豊の沢でなくとも比較的易しい沢といえる。滝は大滝はないものの、3m以上のものだけでも約30ほどもあり、直登できるものが多い。詰めのスラブは開放的で眺めが良いので、条件の良い日を選び乾いたスラブを抜けたい。日帰り遡行も可能なので、2日間とするかどうかは好みにもよるだろう。なお、ロープは30mが1本あれば十分だ。(K.Ku)

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