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No.5026
朝日連峰・ヌルミ沢 祝瓶山・最上川水系野川支流
山行種別 無雪期沢登り
あさひれんぽう・ぬるみさわ 地形図

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山行期間 2014年10月12日(日)
コースタイム
登山口(7:07)→桑住平分岐(7:44)→入渓(7:50)→雪渓(9:30)→屈曲点(10:50)→大滝(11:15)→ルンゼ登攀(12:50〜15:45)→祝瓶山(15:46,16:15)→桑住平分岐(17:32)→登山口(18:04)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
木地山ダムからの祝瓶山 水量は少ない 雪渓が見えてきた
最初の4m滝はロープを出した 3mCS滝 かなり古いRCCボルトとシュリンゲ
雪渓ドームが見えてきた 6m滝 ブリッジというよりドームのようだ
アイスボラードの支点で懸垂下降 崩壊した雪渓を越えていく 花崗岩のフリクションが心地良い
沢は深く切れ込んでいる 再び雪渓が現れる 屈曲点(沢は左へ)から見上げるスラブ
日蔭となった沢を登る 大滝と右壁スラブ 右壁を登る
岩壁の基部を目指す 岩壁基部を左へトラバース セカンドで登るS君
2ピッチ目を見下ろす 終盤の詰め 祝瓶山の影は三角形
山頂のすぐ下で登山道に出た 日が傾いてきた山頂 朝日連峰主稜線と大朝日岳

行動記録
 ヌルミ沢は朝日連峰祝瓶山の東面を源頭とする沢である。長井側から祝瓶山に登ると、登山道の付いている急峻なヌルミ尾根の右手に見える。東面の岩は雪崩により削られ磨かれ、上に行くほど傾斜が立ってくる。そのためヌルミ沢を遡行するとなると、必然的に登攀的な要素が強くなる。今回はそのヌルミ沢を遡行する計画だ。クライミング指向の強いTさんの提案である。自分も2年前にコカクナラ沢の遡行記録に、機会があれば登ってみたいものだとは記していた。しかし、ヌルミ沢相手ではどうにも自分は役不足に思えたので、Tさんがリーダーならということで話に乗ることにした。沢登り2年目のS君もパーティーに加えたが、2人でフォローすれば大丈夫だろう。
 自宅から2時間半弱で登山口に到着。駐車場には既に5〜6台の車があり、登山者が何人か準備中。今朝は放射冷却で気温が下がり寒いが、日中は快晴なので気温も上がるだろう。支度をして歩きだすと桑住平分岐までは40分弱。大朝日岳へと繋がる登山道を分岐で左に折れる。クワスミ沢とカクナラ沢を渡り進むとヌルミ沢に出合う。ヌルミ沢は長さが約1.7kmと短く、集水面積が限られるので水量も多くない小ぶりな沢である。轟々と水を落とす沢の多い朝日連峰の中では、何か拍子抜けするほどでもある。祝瓶山の東面を観察していると、ヌルミ沢の中間部に雪渓らしきものを見つけた。おそらく雪渓に間違いないだろう。雪渓の処理が必要になるかもしれないと覚悟する。遡行を開始するとしばらく穏やかなゴーロが続く。東面が徐々に近づき雪渓がハッキリ見えてきた。雪渓の最下部はブリッジになっているようで、その上にも崩れた雪渓があるのが見える。いやな感じがしたが、とにかく行ってみなければ分からない。
 開けていた沢の両岸が狭まってくると4m滝が現れた。右壁にTさんが取り付くが、結構難しいとのこと。彼がそういうのであれば、残りの2人に登れるはずもない。仕切直して空身になり、ロープを引いて取り付きクリアー。ザックを引き上げ、自分とS君はロープ確保で登る。初っぱなの滝から時間がかかってしまった。その上は小滝が多段に続くが、容易そうに見えても意外にすんなり登れない滝もある。3mのCS(チョックストーン)滝はちょっと手強い。釜はそこそこ深く、両岸は立っているので巻くのも困難。自分はへつってハーケン2枚で滝身に近づき、ハンマーを投げるとうまい具合に引っ掛かったので体を持ち上げた。登った岩の上には、かなり古い折れ曲がったRCCボルトとシュリンゲ。Saさんの2005年の記録にもあるボルトだ。どれほど前のものか知るすべもないが、その当時遡行した先人の奮闘の跡だ。
 前方にハッキリと雪渓が見えてきた。よく雪渓ブリッジと言うが、融けて薄く屋根のようになった形状は、ブリッジと言うよりドームのようにも見える。雪渓の手前で沢は細く溝状となり、右岸から水が落ちる6m滝となる。この手前にも古びたボルトとシュリンゲがあったが、我々はへつって滝に近づく。この6m滝はTさんが突破し、後続にはお助けを出してもらう。パーティーに1人こんな「登れる人」がいると本当に助かる。続く3m滝を越えると雪渓ドームが目の前になった。幅は15m、奥行きは20mほどだが天井は本当に薄い。中央部は厚さが数十センチ程度のようで、紙のようにペラペラに見える。雪渓ドームの下を一気に抜けようかと状態を観察していたところ、雪渓の崩壊音のような鈍い音が聞こえた。見たところ雪渓ドームに変化はないが、その時点で我々に下をくぐるという気持ちはなくなった。雪渓ドームを左岸から巻き、沢へ懸垂下降しようとしたが適当な支点が見つからない。結局、雪渓の端にアイスボラードを作り支点とした。記録では読んだことがあるが、自分がやるのは初めてのことだ。さらに上流も沢を崩壊した雪渓のブロックが埋めている。隙間に落ちないよう気を付けながら崩壊区間を抜け、5m斜滝を越えたところでひと息つく。祝瓶山東面の下部スラブが見上げるほどに近くなってきた。
 5mCS滝を越え4m斜滝と、花崗岩のフリクションで軽快に登る。沢には崩壊した岩が詰まっていて、水流も滝も覆い隠している区間が続く。6m滝をTさんのお助けヒモで登ると小さい雪渓が残っていた。いよいよ下部スラブが近づいてきた。Tさんは登ってみたいなどと呟いているが、こちらにはそんな余裕はない。登るとすれば、それはもはや沢登りではなくクライミングの世界だろう。青空に紅葉が映え美しい。しばしその景色を各自のカメラに納める。下部スラブに突き当たった940mが屈曲点で、ヌルミ沢は左に曲がる。
 方角が変わり日陰となった沢の中を、大岩を乗り越えて登っていくと、1010mで大滝が現れる。大滝と言っても水流は細いのだが、坂野さんの記録によると25mほどの滝が2段になっているという。てっきりこのまま詰めるのだろうと思っていたところ、今回のリーダーTさんは黒く濡れている右壁を登ってみたいという。それでは正面スラブに向かっていくようなものではないかと思ったが、とにかく付いていくしかないと腹を決める。Tさんがロープを引いて登ったが、自分ならとても登れそうもない。再び陽が当たるようになり、さらに登り岩壁下部に近づくと左へトラバースする。このまま登山道に出られるかと思ったが、観察するとそうはすんなりいかないようで、結局ルンゼを直上することになった。時間はかかるが大丈夫だろうとの判断。
 スラブ壁に取り付き、大胆にフリーで登っていくTさんを見ていると、つくづく自分にああはできないなと思う。クライミングはセンスだと聞いたような読んだような気がするが、まさしくそうなのだと思わざるを得ない。50mロープを目一杯延ばしてピッチを切る。次は自分が50m延ばし、最後はまたTさんで計3ピッチ延ばした。残りは傾斜が少し緩み、草付きとなったのでフリーで登る。あとひと登りで山頂かと思ったら登山道に出た。そこから1分で山頂である。結局ほぼ山頂まで詰めてしまったことになる。今日ヌルミ沢の遡行を始めたときに、ここまで登ってしまうとは誰が想像できただろうか。いや、Tさんは密かに考えていたのかもしれない。
 時間も遅いので誰もいない山頂は我々が独占である。快晴無風と絶好の条件で、360度のパノラマを楽しむ。充実感に浸りながら遅い昼食を食べ、30分もゆっくりしてしまった。下山はヌルミ尾根の登山道を下る。暗くなってきたので午後5時20分頃にヘッデンを点ける。桑住平分岐まで下ったところで熊と遭遇し、その後は最後まで笛を吹きまくりながらの歩きとなった。やれやれである。終わってみればヌルミ沢は、想像以上の雪渓があったこともあり、短い中にも刺激的な魅力の詰まった沢であった。登攀性が強い分、自分としては沢登りの範ちゅうからはやや外れるのだが、岩の好きな人には魅力的な沢(岩?)だろう。1日で完結する沢でもあるし、ヌルミ沢はもっと登られてもいい沢なのかもしれない。(K.Ku)

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