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No.4853
尿前川本沢 焼石岳・北上川水系胆沢川支流
山行種別 無雪期沢登り
しとまえがわほんざわ 地形図

トップ沢登り>尿前川本沢

山行期間 2013年9月21日(土)
コースタイム 中沼登山口(8:06)→入渓(8:29)→フロ沢出合(8:48)→万円沢出合(8:51)→三ツ折滝(9:28)→30m滝(10:38)→二俣・夫婦滝(12:56)→奥の二俣(15:11)→登山道(15:37)→中沼登山口(17:28)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
中沼登山口よりスタート 遡行開始 6m滝は右壁を登る
万円沢出合の6m滝 4mヒョングリ滝上部のへつり 3m滝のへつり
ゴルジュを遡る 三ツ折の滝が見えてきた 懸垂下降で三ツ折の滝の落ち口へ
左岸のスラブ ゴルジュが続く 12m滝と虹
30m滝は右岸より巻く 右岸ガレ場を登る Yさんがトラバースする

 
トラバースしながら見た大滝

 
釜へと懸垂下降する
釜へは15mほどの懸垂下降
10m滝は左右から登ることができる ゴルジュの先に4m滝と6m滝が見える 8m滝
5m斜滝 水流に負けそうになる 2段6mナメ滝
5mナメ滝 次の5mナメ滝 堰堤のような7m滝
素晴らしいナメ 二俣は滝で合わさる ルート検討中
左壁を登攀する 落ち口に登るまで気を抜けない 4m滝は微妙
緩やかな20mナメ滝 10m滝 上部のへつりが微妙
10m滝 左岸の露岩 まだ残っていた雪渓
奥の二俣の15m滝 右俣を見る 登山道へと詰め上がる
あと数mで登山道 暗くなる前に下山できそうだ 中沼からの焼石岳

行動記録
 焼石岳の尿前(しとまえ)川本沢は秀渓美渓と聞いていた。ただし、3級の沢なので、それほど易しくはないとも。行く機会をうかがっていたところ、Yさんが計画していると聞き、早速こちらから参加を申し出た。記録を調べると、滝の巻き方でかなり遡行時間が違ってくるようだ。しかも、今回の我々パーティーは、沢登りとしては大所帯の8人となった。おそらく懸垂下降もあることを考えると、遡行時間はそれなりにかかりそうだ。秋の日はつるべ落とし、山が暗くなるのは早い。下山はヘッデンとなるかもしれないと覚悟した。そのため過去の記録を参照してみると、3箇所の滝の巻き方がポイントになるらしいと判った。そこで、効率的な滝の巻き方を頭にインプットして挑むことにした。ただし、実際に現地に行ってみなければ本当のところは判らない。
 巨大ロックフィルダムの胆沢ダムを過ぎると、右手に中沼登山口の看板があり入る。林道を6キロ以上走ると、中沼登山口の駐車場だ。急ぎ支度してスタートしたのは8時06分。予定は7時30分だったので、なおさらヘッデン下山を覚悟する。金明水直登コースをしばらく歩くと、尿前川本沢(以降、尿前沢と略する)に出合い入渓する。明るい沢で、水が白く濁っている。水量はおそらくこれが平水なのだろう。
 すぐ現れる6m滝は右壁から登る。左からハタシロ沢が合わせ、また左からフロ沢が合わせる。すぐ前方に6m滝が見えてきた。滝のすぐ手前右には万円沢が合わせる。この滝は自分がトップで行かせてもらう。右壁をロープを引いて登ると釜があり、上にもヒョングリの4m滝がある。次の3m滝の右からのへつりは、壁が立っているがフリクションがあるので注意すれば問題ない。すぐゴルジュに突入。水量が多ければ突破は困難になろうが、今日は右に左にへつり、水線を歩いたりと楽しく登ることができる。水が少し白く濁っているので、陽の当たる釜は青白く光って美しい。ミルキーブルーとでも表現するのだろうか。
 しばらく戯れたゴルジュを抜けると、第1のポイントとなる三ツ折の滝(15m)が現れた。左岸はスラブ壁で、ここを登ってトラバースすれば落ち口に下りることができそうにも見える。しかし、この左岸から巻いた記録を見ると、このトラバースは良くない。苦戦して追い上げられる場合もあり、なんとかトラバースしたパーティーもギリギリだったとのことだ。今日の我々は8人の大人数なのでリスクを避けたいし、時間もあまりかけられない。いろいろな記録で右岸を巻いているパーティーが多いことから、我々も右岸を巻くことにする。少し戻って登りやすそうなところからブッシュを掴んで登る。落ち口には30mロープを2本連結して懸垂下降。支点の位置にもよるが、30m1本でも降りることができそうだ。三ツ折の滝の巻きには40分ほどかかったが、8人での懸垂下降を考えればスムーズに巻けたほうだろう。三ツ折の滝の上もゴルジュが続く。水が濁って深さが判らないので、気持ちが壁をへつる方に向くが、意外に浅くて水線通しで行った方が良い場合も多い。ゴルジュ突き当たりにある12m滝は、飛沫に虹が架かっている。どう攻略しようかと眺め、左岸を小さく巻いて越える。
 すぐ30mの大滝が目に入ってきた。堂々とした立派な滝で、この滝が第2のポイントとなる。左岸を大きく巻いている記録もあるが、Yさんが以前遡行したときは、右岸壁の上まで登り大きく巻いたという。今回は左壁をトラバースして、落ち口上部に抜けることを勧める。右岸の崩壊した岩の堆積斜面と、草付きとの境を登る。グズグズの岩はすぐ落石となるので、後続に注意が必要だ。落ち口より少し上の高さまで登り、Yさんがロープを引いてトラバース開始。スタンスは十分あるようだが、何せ高度があるので見ている方がドキドキする。セカンド来いと合図があり自分が行くことになったが、想像通りの高度感にシビレた。過去にここで死亡事故があったことも知っていたので、余計に緊張してのトラバース。
 トラバース到達点より少し下げて懸垂下降の支点としたが、滝の落ち口まではまだ15mほどある。30mロープを2本連結して懸垂下降とする。8人のトラバースと懸垂下降には、それなりに時間がかかる。釜の縁に降り立つとすぐ10mの滝だが、登るのは左右どちらからも容易。この大滝の巻きには80分ほど要したが、無事全員巻き終わってやれやれだ。
 大滝の上はゴルジュから、4m、6m、8mといずれの滝も左壁を直登する。次の5m斜滝も左壁が常道だが、自分はあえて水流突破を試みた。思いのほか水の勢いが強く、落とされそうになったが何とか登れた。自己満足の世界だが、たまには体感してみるのもいいだろう。
 やがて沢は平坦になりナメが現れると、その先に2段6mナメ滝、釜のある5mナメ滝が2つ続く。快晴に沢は明るく輝き、美しいナメに最高の気分だ。東焼石岳だろうか、稜線も見えてきた。堰堤のような7m滝を、左壁の直登と左岸の巻きの二手に分かれて越える。すると、おおっと声が出るほど沢幅が広がり平坦になる。その様は、まるで舗装道路と見まごうばかりだ。まったくもって素晴らしい。幅広いナメといえば大滝沢や大行沢が思い浮かぶが、それらともまた違った雰囲気がある。
 前方には二俣に架かる滝が見えてきた。ここは左俣の20m滝へと進むが、ここが第3のポイントとなる。ロープを出して左壁を登るのだが、時間短縮のため2本同時に延ばす。工作は若い人たちに任せ、我々50〜60代は昼食休憩とする。もろい岩で下部は少し手こずったようだが、上部は勾配も緩み、落ち口へとロープを延ばす。登ることにより小さな落石があるので、少し離れてビレイする。40分ほどで全員落ち口へ登ることが出来た。時間のかかる滝はこれで終わりだ
 ナメを登っていくと、すぐ4m滝で水流左を登るが微妙なので、念のためお助けを出したいところだ。左に曲がる5m滝を越えると、緩やかな20mナメ滝となるが、油断せずスリップには注意したい。すぐ上の10m滝は上部のへつりが微妙で、後続にロープを垂らすなどして少々時間を要した。
 小滝をいくつか越えると10m滝があり、5名は次の8m滝と一緒に左岸を巻いたが、自分達3人は水流脇を直登する。周囲の尾根が近くなってきた。左岸が顕著な露岩となり、雪渓が現れたところで休憩を取ることにした。標高は1200m程度で谷深いというほどでもないが、この時期まで雪渓が残るとは積雪量の多さがうかがい知れる。雪渓の周りには、時期遅れのエゾノリュウキンカが咲いている。
 雪渓の上はすぐ奥の二俣の15m滝となる。ここを左俣へ進むと、沢は勾配のあるゴーロとなり、源頭の様相となるが水流は途切れることなく続く。沢に枝が被ってきたが、ヤブこぎと言うほどでもない。赤テープがあったので左のヤブに入ると、すぐ登山道に飛び出た。時刻はまだ15時37分なので、何とかヘッデンを使わずに済みそうだ。未踏の焼石岳はガスの中で見えない。いずれあらためて訪れるとしよう。沢シューズを履き替えるなどして、登山道を下山にかかる。途中の「銀明水」で喉を潤しながら2時間弱歩き、暗くなりかけてきたが無事ヘッデンも使わず中沼登山口に到着した。
 尿前沢はやはり秀渓、美渓であった。遡行距離は長くないのだが、3つの滝の巻きに時間がかかるので、日帰りの場合はそのつもりで入渓したい。自分としては、日帰りの軽いザックで登った方が楽しめるように思う。いずれにしても、巻きのルートファインディングが重要であり、それによって遡行時間が大きく変わる可能性があるので、しっかりしたリーダーのもと入渓すべきだろう。巻き方にもよるが、今回のような巻き方をするのであれば、ロープは50mを1本は持っていきたいところだ。(K.Ku)

ルート図

遡行図

トラック


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