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No.4551
根子ノ三沢
朝日連峰 根子川支流
山行種別 無雪期沢登り
地形図

トップ沢登り>根子ノ三沢

山行期間 2011年9月23日(金)
コースタイム 日暮沢小屋(6:30)=登山口(6:40,7:02)→入渓点(7:20)→5段18m滝(8:34)→3段20m滝(8:48)→三本出合(9:33,9:48)→二俣(10:30)→奥の二俣(11:03)→登山道(12:17,12:40)→登山口(14:56)
写真 写真は拡大してみることが出来ます
入渓点 2段10m滝 釜をへつる
4m滝を快適に直登 8m直瀑は左から巻く 2段8m斜滝
ナメ状の6m斜滝 5段18m 滑りやすい岩は慎重に
3段20m 3段20m滝上部 2段8m滝
ナメ状2段5m滝 ミニゴルジュに4m滝 三本出合
倒木のある4m滝 小川のような渓相 8m滝は左から登る
6m滝も左から登る 源頭も近い 登山道に出た

古寺山の稜線も紅葉はまだ

日暮沢小屋
ルート図

行動記録
 私にとって朝日連峰の沢は今回の根子ノ三沢が初めてとなる。朝日連峰の沢は豪快で困難な沢が多く、沢登りをやり始めた者にとっては、いつかは朝日の沢へという憧れの山域だ。朝日の沢に日帰りで登れる沢は少ないのだが、日帰り出来そうな沢ということで地形図から根子ノ三沢をSさんが選んだのだ。これまで朝日の沢をかなり登ってきたSさんも初めて入る沢だという。ネットで検索したが沢登りの記録は皆無だった。根子ノ三沢は根子川流域の沢だが、この流域内では主稜線に突き上げる入りソウカ沢、赤倉沢などはネットでも記録が見られるのだが。支尾根になる古寺山を源頭とする根子ノ三沢は、遡行者もほとんどいないため記録もないのかもしれない。どこかの山岳会の会報に記録はないのだろうか、もしかすると記録するほどもない平凡な沢なのだろうか、いやいや短いといっても朝日の沢だから何もないはずはない、などと想像してみるが真相は実際行ってみるしかない。初めての朝日の沢に、期待と不安をない交ぜにして当日を迎えることとなった。前日に日暮沢小屋へ入る。明日、午前中は雨が残るとの天気予報が気がかり。
 朝起きると他のパーティーは早立ちしたらしく、小屋の中には我々だけとなっていた。窓から外をみると青空が広がっていた。よし!天気予報はハズレだ。簡単に朝食を済ませ外に出ると、今朝到着したらしい登山者で車が増えていた。6時30分に小屋を出発し、林道を登山口へ向かう。1.5kmほど走ると林道は行き止まりとなり登山口になるが、既に4台の車で駐車スペースは一杯なので、登山口に突っ込むようにして車を止める。私の高度計によると登山口は標高670m(以後表記する高度は私の高度計による)。
 準備をして時:02分に根子川右岸沿いの登山道を歩き始める。500mほど歩くと登山道は左へ折れてハナヌキ峰への急登になるが、そのまま根子川へ降るように続いている踏み跡をたどる。ほどなく根子川に降りることなく根子ノ三沢に突き当たった(標高680m)。枝沢なので根子川本流と比べるとだいぶ小振りな沢だ。沢登りを開始するときはいつも高揚感があるのだが、今回のように記録の無い沢は未知の世界へ踏み出していくようで特にその感が強い。それは沢の大小には関係がない。
 登り始めてすぐ沢は右に曲がるとさっそく滝があった。2段で10mほどあるだろうか。登れそうだと思って右壁を見ると、細い残置ロープが下がっているのが目に入った。おそらく釣師が付けたものだろう。今回は私がトップを仰せつかったのでさっそく右壁に取り付き、残置ロープには頼らず登る。左から枝沢を合わせると3m滝と4mの滝が続くが、いずれも釜のある斜滝で、釜のへつりはあるものの容易に直登できる。倒木の詰まった小滝を越えて歩いていくと4m滝、4m斜滝と続いて現れどちらも右から容易に直登する。この沢は始めから登れる滝が連続するので面白い。ちょっとだけある廊下状のミニゴルジュを過ぎると8mの直瀑だ。この滝の直登は無理のようなので、左から巻こうとしてはたと気づいた。Sさんから預かっていた10mのお助けテープが無い。途中で落としてきたようだ。探すため単身で沢を下降し、かなり戻ったところでようやく見つけることができた。このため20分ほどロスしてしまった。先行して巻き上がっていた2人を追う。左壁のガレからブッシュを掴んで登ると、小さく巻いて滝の落ち口に降りることができた(標高780m)。
 その先は黒っぽい岩の小滝を重ねる連瀑地帯。左から落ちる枝沢を見送り、倒木のある斜小滝に右からの枝沢を過ぎると2段8mの斜滝。こんな滝は釜をジャブジャブ越えて水流をシャワーで中央突破したいところだが、あいにく今日は気温が低いので濡れないよう水流脇を登ることにする。暑い日にシャワーで滝を次々と突破すれば、楽しい沢登りとなるだろう。いくつかの小滝とナメに近い沢床に左から枝沢が小滝で落ちると、ナメ滝に近い6m斜滝(標高830m)が現れ水流左を登る。ここまでは大滝も現れずこんなものだろうかと思い始めていたのだが、そう思うのはまだ早かった。前方に見えてきたのは高さのある多段の滝。こんな滝は何段何mか迷うところだが、我々は5段18mということにした。全体の高さはあるが、傾斜は緩いので快適に登っていける。ここもシャワーで登れれば気持ちが良いだろう。最後の段もフリーで右壁を登ったが、やや滑りやすい岩なので安全のため後続にお助けテープを出す。落ち口から下を見ると結構高度感があるが、ロープを出せば初級者でも楽しんで登ってこれるだろう。
 続くナメ滝8mを登ると前方に高さのある直瀑が現れた。見れば右壁から登って上部のバンドで水流を左へトラバースすれば直登できそうだが、まともに濡れることになるので今日は左から巻くことにする。崖をブッシュ頼りに小さく巻いて落ち口に向かうが、登って初めてこの滝が3段であることに気づいた。3段20mとしよう。ここは落ち口へのトラバースに注意したい。状況に応じてロープも出したほうがいいだろう。5段18m滝からここまでは次々に現れる滝で高度を上げてきたが、沢は落ち着いた様相になり左から2本の枝沢を合わせる。それにしてもこの沢は流れ込む枝沢が多い。細い枝沢ばかりだが、これだけ多いのは豊かな森のおかげだろうか。3m滝を越えると2段8mの滝があり、これも水流中央をシャワーと行きたいところだが水流左を直登する。続く左に弧を描く2段5m滝は、ナメ状で何条にも流れが広がる。
 沢は狭まり流れがトイ状となったかと思うと、右から続けて2本の枝沢を合わせ小滝で左へ曲がる。沢は再び明るく開け左から枝沢が落ちる。釜のある4mナメ滝を越えると、ちょっと面白い形のミニゴルジュに右半分の4m滝。続く5m斜滝は岩が滑りやすく、左からブッシュを掴み登る。まったく根子ノ三沢は滝が多く、実に変化に富んでいて我々を飽きさせない。沢は穏やかな流れとなり、右から枝沢を2本合わせて3m滝のところで高度計を見ると960m。沢幅はいったん狭まるが、すぐに開けて三方から沢が出合うところに出た。左側と前方やや左の沢は斜面を伝う枝沢で、右からの主流とはだいぶ水量も違う。もしかしてここが根子ノ三沢の三沢の由来とも考えたが、本当のところはわからない。ここはわかりやすく三本出合ということにしておこう。地形図でも標高980mの地点で三方から沢の集まる地形が確認できた。三本出合から主流の3m滝を越え、倒木のかかる4m滝を登ると小川のような流れとなる。それを見てもうそろそろ滝も現れなくなるかと思ったが、標高1000m付近で左に屈曲しトイ状の先に釜のある8m滝が現れた。この滝は左の草付きから直登。すぐ5m斜滝と6m斜滝があるがいずれも容易。もう終わりかと思うと6m滝があり、直登は無理なので左壁の草付きから登る。すぐ二俣があり(標高1010m)水量の多い右へと入る。
 いよいよ水量も少なくなり沢には草が多くなってくるが、木の枝が上から被らないので沢は明るい。この辺りから左数100mに登山道が平行しているので、源頭まで詰めず枝沢から登山道に出てもいいだろう。標高1150m付近で小さな二俣となる。どちらも水量は同じくらいに見えたが、地形図で確認して左へ進む。源頭が近くなり水流はブッシュに隠れがちになるが、まだヤブこぎというほどでもない。稜線が近くなりちょっとした草原のようなところになると、沢は斜面の中に吸い込まれていった。よく見ると地面の一点から水が湧き出ていて、これがまさに根子ノ三沢の源頭だった。後ろを振り返れば左手に障子ヶ岳の鋭峰が目立つ。月山、蔵王連峰、吾妻連峰などの峰々も見える。その後はヤブこぎを30分ほどして登山道に飛び出した。ちょうど2人の登山者が通りかかったが、どこから出てきたのかと驚いていた。高度計を見ると標高1420m。源頭からのヤブこぎで直上しすぎてしまったようで、もっと登山道のある左寄りに進んでいれば、ヤブこぎは15〜20分程度で登山道に出られたかもしれない。休憩してから初秋の朝日をゆっくり下り登山口まで戻った。大井沢集落でいつものとおり「ゆったり館」の温泉で汗を流し、民宿「大原」で食事をしてから帰途についた。
 私にとって根子ノ三沢は初めての朝日の沢だったが、朝日の沢としては入門の入門クラスなのではないだろうか。お助けテープは何度か使ったものの、ザックに入っていた30mのロープは使わずじまいだった。しかし小さいとはいえ、滝が豊富で遡行者を飽きさせない魅力的な沢なのは、やはり朝日の沢らしいといえるのかもしれない。釜のある滝は多いが泳ぐほどのところは無いのがちょっと残念だが、夏にシャワークライミングで次々と滝を登っていくのは楽しいだろう。アプローチも下山も登山道を使えて楽な根子ノ三沢は、もっと登られていい沢なのではないだろうか。(K.K)

溯行図

トラック 登り=赤  下り=青



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