双葉町から国道288号線を郡山方面に向かい、大熊町に入ると一等三角点を持つ日隠山が見えてくる。山裾まで行くと、なだらかな山容のためピークが見えなくなってしまう。大熊町・坂下ダムから登山道が整備されている。
国道288号線の山神から県道いわき浪江線に入り、上平バス停の手前を坂下ダムの標識に導かれて右折する。しばらく登っていくと坂下ダムに着く。季節にはヤエザクラ、ソメイヨシノ、シダレザクラが咲き誇る。登山口の駐車場にはトイレも整備され、大きな案内板もある。身支度をして出発する。駐車場の脇から登り始める。
スギの造林地の中を登っていくと「啼き啼き坂」となる。しばらく急坂を登っていくと「坂の上の道」に出る。尾根に出ると道も平らになり、立派な切り通しのところもある。「坂の上の道」の説明板には旧会津街道と記されている。言われてみると、そんな雰囲気もしてくるから不思議だ。
やがて土塁が高い真っ直ぐな尾根道になり桜窪に着く。ここはかつてヤマザクラが一面に咲き、板付観音の一ノ鳥居があったところである。うっそうとしたマツ林を過ぎ、左にスギの造林地が出てくるあたりから、日隠山の前衛峰である望洋台と呼ばれるピークが見える。
右手から六郎沢からの道を合わせ、姥懐を過ぎ林道と合流すると、唯一の水場「参詣清水」に着く。ここからロマンの広場へ向かう道と望洋台を経て日隠山に向かう道に分かれる。まずは日隠山を目指す。右の登山道を15分ほど登っていくと、569.6m四等三角点の「望洋台」に着く。振り返ると名前の通り太平洋が一望できる。この先、日隠山まで境界を示す土塁が続いている。一旦下り、一等三角点を持つ日隠山のピークまで登り返して休憩とする。
一等三角点は土塁の右手下にある。以前は見通しも利いたのであろうが、いまでは木々に覆われて展望は無い。すぐに下山にかかり、展望の良い「ロマンの広場」で遅い昼食をとることにする。天狗岩を過ぎ、林の中の急坂を下りていく。道は不明瞭だがロープが張ってあるので迷うこともない。日隠山をトラバースしている登山道・旧会津街道に出たら左に折れる。右は通行不可になっている。山腹をトラバースしてロマンの広場に向かう。下方に新しくできた林道が見えてくる。まだ調査していないが、林道を車で登ってくると日隠山まで短時間で登れそうだ。便利なことは良いことだが山の魅力は半減してしまう。
トラバースルートから標識に導かれ右に折れると「ロマンの広場」に着く。この「ロマンの広場」と名付けられた小高い丘は、何とも言えない解放感と素晴らしい眺めを保証してくれる。眼下には大熊町、富岡町、その奥には太平洋が大パノラマのように広がる。日頃山に囲まれた生活をしていると、太平洋の雄大な眺めは新鮮な感動を覚えさせてくれる。遅めの昼食とする。時間の許す限り眺めを楽しんでから帰路につく。板付観音を経て、先ほどの分岐点「参詣清水」を通って、坂下ダムまで登路を忠実に戻る。(I.I)
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