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No.4881
御前ヶ遊窟
山行種別 無雪期一般
ごぜんがゆうくつ 地形図

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山行期間 2013年11月9日(土)
コースタイム 登山口(7:58)→鍬ノ沢渡渉点(8:07)→タツミ沢入口・登山道合流点(8:28)→シジミ沢出合(9:39,9:55)→御前ヶ遊窟(12:16)→岩塔頂上(12:41,13:09)→ソウケエ新道(14:05)→鍬ノ沢渡渉(15:42)→登山道合流点(15:56)→登山口(16:24)
写真 写真は拡大して見ることが出来ます
わらび園にある案内図 わらび園にある案内図 鍬ノ沢を渡渉
右からソウケエ新道が合わさる合流点 マップで確認する シジミ沢拡大図
対岸のスラブ(尾根はソウケエ新道) 岩塔が見えてきた シジミ沢出合
御前ヶ遊窟の岩塔が見える プアマンズアプローチシューズ? シジミ沢の始めは苔むした岩登り
濡れたスラブを登る(右にトラロープあり) 振り返ればスラブの滑り台 チムニー状の岩溝
赤テープが要所にあり迷うことはない クサリが下がっている 高度感が増してくる
ルート確認中のYさん これから登るスラブと御前ヶ遊窟のある岩塔 スラブにロープを延ばす
スラブ溝を登る 右から回り込む 岩塔へトラバースする
御前ヶ遊窟の岩室 遊窟から左のスラブへ回り込む 高度感が凄い

 
山頂より下を覗くと吸い込まれそう

 
ソウケエ新道のある尾根
岩塔(846m)
飯豊連峰 切れ落ちた山頂北端で怖々と 遊窟の下にある書き込み「かえり 5m下 左」
ソウケエ新道への分岐はクサリで登る 岩塔基部を巻く 尾根のソウケエ新道へと登る
ソウケエ新道を下る クサリを頼って下降する 登山道を戻る

行動記録
 御前ヶ遊窟(ごぜんがゆうくつ)を知ったのは、ほんの数年前のことだ。新潟県阿賀町にある御前ヶ遊窟は、会越国境山群に属する井戸小屋山(902m)の東尾根の岩塔にある。御前ヶ遊窟という名称が、何やらいわく因縁ありげではないか。調べると、武将平維茂の奥方が隠れ住んでいた(と言い伝えられている)洞窟のことのようだ。豊富にあるネットの記録を見ると、スラブの登攀画像が印象的だ。特に秋は紅葉が美しいようで、いたく興味をそそられた。昨年は機会がなかったが、よし今年こそはと思い定めていた。行きたいと口にしていたところ、仲間が集まり5人で行くことになった。御前ヶ遊窟は全員が初めて。自分はちょっと苦手なスラブ登攀に、期待半分不安半分というところ。
 午前5時に集合し、高速に乗り津川ICで降りる。棒目貫という山間の集落を過ぎると、観光わらび園があり、御前ヶ遊窟の案内図がある。道なりに進むと、右カーブの先の案内板に従い左の林道へ入る。300mほどで行き止まりとなり、ここが登山口だ。数台の駐車スペースがあり、登山ポストがある。既に先客が1台駐車してあり、3人パーティーが今まさに出発するところだった。我々も支度をし、登山ポストの中の登山者名簿に記入して7時58分に出発。
 細い道を進むと左下の鍬ノ沢へと、ぬかるんで滑りやすい道を下る。鍬ノ沢を渡り、右岸に道は続く。細い道はぬかるみ、急斜面のトラバースが嫌らしい箇所もある。ゴム長靴のほうが合いそうな道だったのは予想外。
 ソウケエ新道合流点の先に、御前ヶ遊窟の詳しいマップがあったので再度確認。左岸の尾根は徐々に高くなり、切れ落ちるスラブが見事だ。道が菅倉沢を渡るところで、自分だけ鍬ノ沢に降りてそのまま沢を登ってみる。沢を遡上すると、10分ほどでシジミ沢出合に到着。シジミ沢は水流も無い小沢で目立たないが、赤テープがあり、すぐ上流には滝があるので間違うことはないだろう。
 先行する3人パーティーが準備していた。道を歩いてきた他のメンバーも到着し、沢を渡って合流。ここで靴を履き替えることにする。Iさんは最初からラバーソールの沢靴だが、Sさんはフェルトソールの沢靴、YさんとUさんはアプローチシューズに履き替える。自分はラバーソールの沢靴も、ましてやアプローチシューズなんて持ってない貧乏沢屋。いつものフェルト靴と思ったが、乾いたスラブとフェルトの相性は今ひとつなのを知っている。なので以前より気になっていたハイパーVという靴を新調してきた。ハイパーVは作業用の靴なのだが、ソールが滑りにくいゴムで、しかも対摩耗性もあるという優れものらしい。そこそこ沢登りにも使えるということで、一部の沢屋さんが密かに使用している。自分も使ってみたいと考えていたので、良い機会と思い昨日買ってきた。価格は2980円也。
 3人パーティーより早く準備が終わり、先行して登り始める。シジミ沢はほとんど水流が無い。取り付きから木の枝が被る急なゴーロ登りで、岩は苔が付いていて滑りやすい。やがて開けると、両側がブッシュのスラブとなり、目線を上に向けると御前ヶ遊窟のある岩塔が見える。スラブはわずかに水が流れていて濡れているが、フリクションはあるのでそのまま登れる。クサリやトラロープも下がっているが、はたしてどこまで信用できるのかは不明だ。古いトラロープには、なるべく頼らない方がいいだろう。アプローチシューズのYさんはどんどん登っていくが、自分も含めた他のメンバーは慎重に登る。足下のハイパーVは思った以上に好感触だが、今年は身辺で転滑落者が続いたこともあり、より慎重になっている。スリップすればどこまでも滑り落ちるのではという不安が、腰の引けた登りにさせているようだ。そんなこともあり、今日のトップはYさんに任せようと思った。自分はしんがりを務めようとゆっくり登っていると、3人パーティーが追いついてきたので先行してもらう。
 スラブはブッシュで狭まり、チムニー状の岩溝区間を登ると、赤テープに導かれて少し右にそれる。今のところ赤テープは要所要所にあり、追っていけば間違うことはなさそうだ。ルートが不明確で苦労したという記録もあるところを見ると、その後に新しく付け直されたのかもしれない。ブッシュ混じりの岩場を登ると、少し左に戻ってスラブに出る。長いクサリが下がっているが、練習の意味もあり初めてロープを出す。1ピッチ登るが、スラブは御前ヶ遊窟の岩塔に向かって真っ直ぐ続いている。このまま登れば最短で到達しそうだが、上部は傾斜が立っていて厳しそうだ。迂回ルートなのかもしれないが、赤テープに従い右に曲がってから左回りに回り込むように登る。ここは高度感はあるものの、フリーでも不安はない。
 今度は左へ岩塔の基部を目指すが、ここのトラバースでは念のためロープを出した。向かう先では、先行していた3人パーティーの1人がスラブで行き詰まり、上からロープを垂らしてもらっているところだった。到着した岩塔の基部には岩穴があったが、御前ヶ遊窟はもうひとつ先の岩穴で、奥には何やら仏像らしきものがある。
 御前ヶ遊窟は自然に出来た岩室らしい。本当に平維茂の奥方が隠れ住んだのかどうかは判らないが、岩室の前に水がしみ出ているところがあり、食料があればしばらく暮らすことも出来よう。
 せっかくなので、岩塔の頂上に登ってみることにする。下で見たマップによると、遊窟を出てすぐの直上する岩に取り付くと急で登れなくなるので、左のスラブを登るといいらしい。3人パーティーが直上する岩に取り付いていたので、そのことを言ったが大丈夫と登っていった。我々はマップどおりに左のスラブに回り込む。スラブ脇のブッシュを頼りに登れるが、ここでも念のためロープを出し安全第一で行くことにする。今回の登りで、ここのスラブが一番高度感があった。もし転がれば、400m下まで落ちることは間違い無いだろう。
 スラブを登って少しヤブを漕ぐと尾根道に出る。右が岩塔で左が井戸小屋山へと続く。岩塔の頂上(846m)に登ると、5人が休む程度の広さがあったので昼食とする。風もなく暖かい山頂で、眺めはすこぶる良い。南北に長い頂上の端に立って下を見ると、何100mも下まで切れ落ちていて吸い込まれそうだ。3人パーティーはスラブで手こずったのか、我々が下り始めた頃に登ってきた。
 さて、登ってきたとおりに遊窟まで戻ろう。ロープを残しておいたのでスラブの下りも安心だが、それでも怖いものは怖い。遊窟に着いたら岩の書き込みどおりもう少し下ると、左手にクサリがあり急な登りとなる。これがソウケエ新道へと登る分岐だ。トラバースしながら斜上していくと、岩塔の基部を巻いてトラバースする。尾根に向かって登っていくとソウケエ新道だ。
 初めのうちは露岩の細尾根やクサリ場で気を抜けない。しかも、アップダウンを繰り返しなかなか標高が下がらない。やがて下り一辺倒となり標高を下げていく。尾根の左右もすっぱりと切れ落ちたスラブだ。最後に5箇所目のクサリ場を降りると、タツミ沢の渡渉である。鍬ノ沢の左岸を少し下り、対岸へ渡渉して登山道に合わせる。ちょっと暗くなってきた山道を急ぎ下り、登山口には16時25分到着。登山者名簿に下山時刻を記入し山行を終了した。
 会越国境山群は、雪に磨かれたスラブの岩肌を持つ山が多い。その滑らかなスラブは、クライミングの対象となりこそすれ、一般登山者が登れるようなものではない。この御前ヶ遊窟のスラブのように、一般登山ルートの範ちゅうに入るものは珍しいのだろう。とはいえ、スラブの登攀は難度が高い。ロープは使わず足下は登山靴のスタイルでこのスラブを登る人もいる。また、我々のように、ハーネスにヘルメットとフル装備のパーティーもある。考え方の違いになるかもしれないが、一般登山の上級ルートとして考えても、ヘルメットは被った方が良いだろう。今回は初ルートでロープを3回出したこともあり、それなりに時間がかかった。特段にトラブルが無い限り、今回より行動時間が長くなることはないだろう。御前ヶ遊窟を計画される方は、人数等により加減して参考にされたい。(K.Ku)

概念図

トラック 登り=赤 下り=青


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